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急速ろ過法 Rapid Filtration

 急速ろ過法について関連情報を集めました。浄水処理の中核をなす重要な処理法ですが,そのメリットは意外によく知られていないような気がします。

【参考】


急速ろ過法 Rapid Filtration

着水井

       

フロック形成池

     
               
     

排水池

 
               
         

排泥池

               
       

1)施設構成

 急速ろ過システムは,原水濁度への守備範囲が広いこと,面積あたりの処理能力が高いこと,自動化が緩速ろ過よりも容易なこと,などの特徴から,大規模な浄水場を中心に広く普及しています。

 ただ,溶解性物質などへの対応力は緩速ろ過よりも低く,その後の原水の悪化によって高度処理と呼ばれるさまざまな追加処理を導入するケースが広がっています。

 急速ろ過法では,急速ろ過池が機能するために,凝集操作が必要不可欠です。方式にいくつかの派生法はあるものの,凝集沈殿池に相当する施設が必要不可欠です。まれに,凝集剤を入れることなく急速ろ過池を運営している事業がありますが,これは水処理をしていないのと同じですので,早急に改善することを提言します。

  • 急速ろ過方式の浄水場の例

 大規模な表流水の浄水場では,施設効率,人的効率の面から急速ろ過を採用するケースが多くなります。特に,高度成長期,水不足や平地不足が深刻化した時代に計画,建設された大規模な浄水場では,ほとんどこの方式以外に選択肢はありませんでした。

 次の写真の例では,左から右に水を流して処理するようになっています。フロッキュレータ,傾斜板つきの横流式沈殿池が設置されています。もっともシンプルかつ合理的な配置で,このような配置の急速ろ過池は最も一般的といえるでしょう。

 次は凝集沈殿池に高速凝集沈殿方式を採用している例で,手前から奥側にむかって水が流れていくようになっています。高速凝集沈殿方式は,うまくいけば効率は高いものの,条件の変化が著しい日本の場合,コントロールが難しいのが実情で,新規で水道用ではほとんどみられなくなりました。

2)理論

 除去原理は,ストレーニング(篩い),沈殿作用,吸着作用,フロックの成長などといわれています。

 急速ろ過法では,原水に凝集剤と,必要に応じて助剤を投入し,これをなるべく急速に攪拌(混ぜ合わせる)して均等に行き渡らせます。凝集剤は,水の中の懸濁質(微細な固体状の不純物)を絡め取るようにして集め,フロックと呼ばれるふわふわの塊を形成させます。フロックは成長すると沈みやすくなりますので,これを沈殿池に導いて流速を落として沈めます。そして,最後の仕上げに砂ろ過池でろ過して残ったフロックを取り除く方法です。

 ろ過池で蓄積した懸濁質は,砂層を閉塞させて水の流れを阻害し,水のもつ位置エネルギーである水頭を消費しますので,あるていどの頻度で逆洗浄という逆向けの流れを起こしてろ過層にたまった懸濁質を除き,汚泥として分離します。

  • 東京都金町浄水場のマノメータ

 写真はマノメータと呼ばれる装置で,ろ過池の各ポイントから透明な管を抜き,その水位で静水圧を並べて表示できるようにして,損失水頭のチェックを簡易に行えるようにした装置です。層の損失水頭の状態が詳しく把握できるので,実験などでよく使用されます。

 凝集ろ過のコツを以下に示します。

  • 凝集剤の混和が鍵
     初めに凝集剤を投入する際には,ごく短時間(経験上最大で1秒とも言われる)で確実に原水行き渡らせなければなりません。小麦粉でカスタードクリームを作るときのように,ダマになってしまうと凝集剤が効果的に働きません。このための急速攪拌には攪拌機程度では不足で,滝流やジェットを使ったり,分散注入したりすべきとのことです。水温によって水の粘度は倍半分も変わりますので,低水温期でも十分な攪拌効果が得られるようにしなければなりません。
     ただし,逆にゆっくり攪拌したほうがよいとの研究成果もあるようで,見解は一致していないようです。
  • 沈殿が重要
     急速ろ過の成否は沈殿が握ります。良好なフロックを形成すれば沈殿池で0.1度程度までは濁度を低減できます。流出したフロックを完全に除去するためにろ過池を設けているわけですが,ろ過池の運営は浄水管理でももっとも労力を要する工程ですので,これを低減できると浄水場の管理の確実性は著しく上昇します。
     ただし,漏出したフロックもろ過池で捕捉できますので,海外などではこれに依存してあまり精度のよくない凝集沈殿を平気で使用しているケースもあるようです。
  • 偏流はよく発生する
     水は温度差があると全然混じりません。沈殿池のように水流を低くしている場合は,温度偏流といわれる水の不均等な流れが発生しやすくなります。また,太陽光で部分的に暖められることで,対流が発生することもしばしばです。もっとも気をつけなければならないのは,原水取水口を切り替えたり,急に降雨があって水温が下がる場合などで,濁度成分流出の主たる原因になっています。特に急速ろ過法ではこの点の注意が必要です。
  • 微生物の影響
     藻類や微生物などは濁度成分として除去できますが,これらはフロックとして凝集しても,沈降性が悪い豊潤なフロックになり,ろ過池まで漏出して閉塞の原因になります。このため,微生物の繁殖が予想される原水の場合は特に微生物対策として塩素を添加するなどされます。

3)構造

 急速ろ過池の構造モデルは,大きな浄水場では比較的頻繁に見ることができます。ここでは写真を紹介。

  • 急速ろ過池の構造模型

 右の2つの写真は,別別のところで撮影した急速ろ過池の構造モデルの写真で,下部集水装置の上に支持層,ろ過槽が乗っかっている形が一般的です。

 下部集水装置でもっとも重要なことは,逆洗浄時に均等に噴流が得られることで,これがうまくいくかどうかが急速ろ過槽の性能を大きく左右します。左の下部集水装置はホイラー型という形式で,ボールを組み合わせる方式で,古くは主流でした。対して右側は有孔集水ブロックを敷き詰める方式で,近年ではこちらが主流になっています。特に,空気洗浄を行うような場合で有効です。

4)除去対象

 急速ろ過法は,基本的には,懸濁質,すなわち水のなかの泥などの濁りを除去するプロセスです。ですから,水に溶けている物質を除去するのは得意ではありませんし,そういう意味での水質の改善効果は基本的に期待されてません。急速ろ過法のメリットは,大量に,自動的に処理できる,という点であって,水質の改善効果が特に優れているわけではありません。

 しかし,懸濁質やこれを凝集させるために投入する凝集剤が吸着材の役割を果たすため,イオンのように親水性が強い物質でなければ,様々な物質が結構除去されます。(せいぜいよく除去できても50%程度ですが)。また,ヒ素など一部の溶解性物質は,共沈現象により相当程度除去されます。

5)導入条件

 濁度の変動に強く,日本の河川でよくみられたように,急に流況が変化するものの,溶解性の汚染物質の比較的少ない表流水に向きます。ただし,濁度が低すぎるとフロックの形成に支障が生ずるため,処理がうまくいかなくなりますので,原水が清浄すぎる場合はお勧めしません。

 溶解性物質の多い地下水では,イオンなど溶解性物質の除去が苦手なこと,濁度が低いことなどから,適用できない場合が多くなります。ただし,塩素などによる酸化不溶化と組あわせ,除鉄,除マンガンプロセスとして用いる場合があります。

 汚染の進んだ原水では,急速ろ過のみでは有機物汚染の十分な除去効果が得られません。また,このような原水ではろ過池に微生物ははびこるなどしてろ過閉塞が発生しやすくなります。前塩素などによりこれを抑制することになりますが,水処理としてはあまり好ましいことではありません。このような場合は高度浄水処理を導入することになります。

 なお,凝集剤として初めて使用されたのは硫酸ばんどですが,日本で開発されたPACが有効で安価であるとして世界に広まりつつあります。このほか,ACT21研究の成果として各種の高分子凝集剤も使用可能になりましたので,この実用化をにらんだ実験などが行われています。

6)ろ過砂あれこれ

 急速ろ過のろ過砂は一般に珪砂(普通の砂)を用いますが,急速ろ過用のろ過砂(一番上の層)に使える砂は粒度などの条件が非常に厳しいので注意しましょう。急速ろ過用のろ過砂の条件について,水道水質辞典には以下のように掲載されていました。昔はこのあたり,よく試験に出たものです...

  • 急速ろ過用珪砂
     石英質で硬く破砕されにくい,均質な砂。比重2.6前後,有効径0.6〜0.7mm,均等係数1.3〜1.6程度,空隙率45%程度。

 また,ろ材の比重などを利用して複数のろ過層を積み重ね,ひとつのろ過池で複数のろ過層を設ける方法を多層ろ過といいますが,これに使用されるろ材には以下のようなものがあります。これも水道水質辞典から。

  • アンスラサイト
     石炭の良質なものでもっとも炭化が進んだもの。黒色で稜角に富み,灰分が少ないほど上質。比重1.5前後,有効径0.9〜1.4mm,空隙率55%程度。.

 アンスラサイトとは無煙炭のことで,比重が小さいため,普通の砂と一緒にろ過池に投入しても,逆洗後上の方に浮き,これにより多層が形成できるのです。写真協力は日本原料株式会社,熊本水道展04で撮影いたしました。

  • ガーネット
     珪酸塩鉱物で半透明の赤褐色。別名ざくろ石,金剛砂等。比重3.15〜4.3程度,有効径0.25〜0.3,空隙率40〜50%

 これらろ過用の資材は,トーケミ,日本原料、西戸崎興産などのメーカーが供給しています

 ところで,ろ過砂は長期間使用していると,磨耗などによる機械的な性能の限界が来るより前に,鉄マンガン等を中心とした付着物によって性能が低下することがあります。このような場合は,砂の洗浄,あるいはろ過砂の更生を実施することが推奨されているそうです。

 特に,これはトーケミさんからの情報提供ですが,供給会社に委託すれば新砂レベルまでの洗浄と,洗浄時に発生する濁度の低減の両立といった,技術的に高度なサービスを受けることもできるようですので,ろ過砂の汚れが見られるような場合には,前出の各社さんに問い合わせてみられるとよいでしょう。

【備考】


急速ろ過派生法 Branch Method of Rapid Filtration

 急速ろ過法にはいくつか派生法というべき方法があります。少し取り上げてみます。

1)直接ろ過法(マイクロフロック法)

 沈殿池を省略,フロックをあまり成長させないで直接ろ過を行う方法です。低濁度では凝集される濁度成分が十分になく,フロックが成長しませんので,思い切って沈殿プロセスをあきらめることにした,というやり方です。凝集剤注入量は1/2〜1/3と低減できるため,汚泥発生量の低減,濃縮性や脱水性の向上などの効果があります。

 ただ,原水の水質が安定していなければ使用できませんし,いずれせよ凝集沈澱ですので,濁度が低すぎる場合には凝集剤を投入して凝集剤を除去しているような形になりかねません。濁度に対しての凝集剤の注入管理もかなり難しくなる傾向にあります。常時低い濁度であるなら緩速ろ過を想定するケースの方が多いでしょうし,クリプトなど特殊な要因が問題なら,最近は,目的別の機能を備えた膜処理設備なども開発されてきています。

 以上の理由から,狸としてはあまり推奨いたしません。採用したとしても,二次凝集や色度対策など,本来の除濁処理とは別の,補足的使用が一般的と考えます。

2)高速凝集沈澱法

  • 東京都金町浄水場の高速凝集沈澱池

 写真は東京都金町浄水場の高速凝集沈澱池です。左は休止中の池のもので,傾斜管などの付属設備がないため,構造がよく分かるかと思います。内側のスカート状の板の内側にフロック濃度が高い部分を設け,ここに原水を通すことで,フロックに流入してきた懸濁質を捕らえさせます。右側は,世界的にも珍しい矩形の高速凝集沈殿池の掻き寄せ機で,メンテ,塗り直し中の写真です。通常の円形と違う点は,スイングアームがついていて,矩形の池の先の方まで掻き寄せができるよう工夫されている点です。荏原製だそうです。

 高速凝集沈澱池(スラッジブランケット法)は米国で発明された方法で,日本では初期に用いられました。フロックの濃度が高い部分を設けて原水がここを通るようにすることで,初期の微細なフロックが既に成長したフロックに補足され,高い効率が得られる方法です。このため,能力に対して面積を抑制できることが大きなメリットで,大規模な浄水場でよく用いられました。現在でも残っている浄水場はあります。

 この方式では,凝集剤の投入量や排泥を調整して,常にフロックの状態を最適に維持しなければなりません。欧米の大河川ような濁度変動の小さい水源や,熱帯地方のように水温が高く粘性が低い場合であれば効率向上のメリットを活かせるのですが,日本の河川のように濁度が急速に大きく変化する水源を利用している場合はフロックの維持が非常に難しく,スラッジブランケット内のスラリー(フロック)濃度が下がりすぎて濁度が漏出したり,逆に上がりすぎてブランケットが一杯になってあふれたりしやすくなります。高度なコントロールができる人員と技術を有する大きな浄水場でなければなかなか対応しきれないうえ,少なくともわが国では古い技術なので,シミュレーションなどの自動化研究が余りなされていないこともこの傾向を助長しているのだそうです。

 凝集沈澱方式は,フロックが漏出してもろ過池でこれを捕まえられるので,この方式でも水質的な問題は生じませんが,どうしてもろ過池の受ける負荷は大きくなりますので,新規に建設することは,まあ,無いんではないでしょうか。

  • イタリアアンコネラ浄水場急速ろ過池

 凝集沈澱池が高速凝集沈澱池であるためか,結構フロックは漏出していたのですが,ろ過池はすごくシンプル。特に,表面洗浄装置やトラフが見当たらないのは,日本の凝った設備を見なれた目には新鮮でした。

3)多層ろ過法

 アンスラサイト[比重小]−ケイ砂(通常の砂)−ガーネットなど,複数のろ材を多層に積み重ねて,ろ過面積を増やす方法。処理速度240 m/日 が可能とのこと。既存のろ過池の能力向上が可能なメリットがあります。ただ,内部まで洗浄をするための調整のノウハウが必要で,これを含む維持管理技術に熟練を要するのが難,ということです。

4)ろ過の高速化

 高速凝集沈殿法とは異なり,ろ過池のろ過速度の向上について研究されている方法で,凝集剤を工夫してフロックを壊れにくくすることにより,高速な処理速度を実現します。(財)水道技術研究センターが中心となって産官学の共同で進めているACT21プロジェクトの成果をみてもらえれば詳しいところが少しは見えるはずです。

 日本の水道で広く使用されているのは,PAC(ポリ塩化アルミニウム)と呼ばれる凝集剤で,性能が良く(pHの許容度が高く凝集性がよい)安いのですが,PACのみでは自由度に問題がありますので,将来的な技術の幅を考えて鉄系(塩化第二鉄,塩鉄+水ガラス),ポリマーなどの凝集効果が研究されています。

 ちなみに、ろ過速度の120〜150 m/日は,この技術が開発された20世紀初頭にアメリカで実験時に設定されたもので技術的な根拠はないのだそうです。高効率浄水技術研究(ACT21)のセミナーでのお話では,300m/日程度のろ過速度を実験中とのことでした。凝集剤にもよりますが,実験レベルでは400m/日で行っている例も見たことがあります。通常120−150m/日のところを400m/日の速度でろ過できれば,施設能力は2-3倍程度にアップする計算です。

 ただ、一方で、ろ過の高速化は、凝集剤の工夫や逆洗浄への空気洗浄の導入などの工夫を要求する場合もあります。一般論で語るにはちょっと私にはノウハウが不足しているので、ここではあまり詳しいコメントは控えることとさせていただきます。

【備考】


急速ろ過施設 Rapid Filtration Equipment

 急速ろ過施設については,設計用の数字を含めて直さないといけません....あ〜あ,いつやろ...

(1)薬注設備

  • 凝集剤
     凝集剤の注入についてはこちらへどうぞ。

(2)急速かくはん機

  • 急速かくはん機の例

 尼崎浄水場で撮らせていただいた写真をアップしました。急速かくはん機については大体どこでもこんな感じです。ちなみに,急速攪拌機は常に連続運転で,かつモーター部が露出することが多いですから,実は浄水場の機械の中でも音の問題を発生しやすい設備なのです。住宅地に浄水場を作る場合は十分に音の検討をしてください。

(3)フロック形成池

  • 横軸式フロッキュレータの例

 この写真は廃止されたフロッキュレータなので,形式は古く,全体にさびさび。ふつうはこんな錆錆じゃありませんので念のため。ただし,通常水に沈んでいてわかりにくい形状がよく分かるかと思います。一般に,横軸式の方がフロッキュレータの部分で沈降が発生しにくく,攪拌効率に優れるといわれますが,機械的構造,とくに軸のシーリング機構が厄介になるのと,まれに軸流に乗ってショートカットが発生することがあるのだとか。

  • 縦軸式フロッキュレータの例

 縦軸式の例。機械を水面より上に設置できるのでメンテが容易。効率面でうるさくない小規模な浄水場で主として使用されます。

  • 上下う流式フロック形成池

 世界的には,消毒の思想はもっと柔軟なようです。

 う流式フロック形成池の例です。左は尼崎浄水場の全景。上からみてもわかりにくいのがつらいところですが...安全のため,グレーチングで蓋をしています。右は,別の浄水場のう流部をクローズアップしたもので,潜り堰部は固定,越流堰部が角落としにより高さ調整ができるようになっている様子が分かります。余談ですが,う流式フロック形成池の水理計算書は一度見ると二度と忘れないような印象的な雰囲気を醸しています。

 

  • 水平う流式フロック形成池

 水理的には上下う流が優れます。これは,できかけのフロックがたまらないためですが,どうしても構造が大がかりになりますので,水量が少ない場合は水平う流式を採用することがあります...写真の例もその一つですが,ちょっと段が少ないような...この程度でフロック形成をコントロールできるかどうかちょっと心配ですが...

(4)凝集沈殿池

【備考】


(5)急速ろ過池

 急速ろ過池の仕様は以下のとおりです。

 処理後濁度 0〜0.2度。処理速度120〜150 m/日。
 砂層厚60〜70 cm ,有効径0.6〜0.7 mm,均等係数 1.3〜1.6 程度。
 濁度流出,損失水頭増大,ろ過持続時間などにより逆洗。

 なお,逆洗浄の方法としては,わが国では逆流のみでの洗浄が普通ですが,熱帯地方においては水の粘性が低いためにこれでは十分に洗浄できないため,エアバブリングをあわせて行うそうです。

1)RC製急速ろ過池

 大規模な浄水場では,RCコンクリートによりオーダーメードでろ過池を製作します。

  • 東京都東村山浄水場の急速ろ過池

 通常,ろ過池は浄水場の中でもっとも敷地面積を要する施設です。逆洗浄時にも計画水量分を浄水できるだけの能力を確保するのが普通です。

 歴史を有する浄水場では,急速ろ過池の操作をろ池を見ながら行うため,回廊が設けられています。回廊内には洗浄装置の操作盤があります。(もっとも現在では自動化されているので撤去されているかも)

  • 東京都金町浄水場の急速ろ過池

 休止中の池で,中の構造がよく見えます。トラフの隙間から回転方式の表洗装置が見えます。

2)急速ろ過機

 急速ろ過機と呼ばれる,タンク式の装置も開発されており,重力式,圧力式の2種類があります。活性炭ろ過機などでよく使用され,比較的小規模でカタログ品が使用できる場合などは積極的に活用されるとよいでしょう。

  • 急速ろ過機の例

 左は実験装置用です。実験用としてはかなり大きいろ過タンクです。詳しい仕様は確認しておりません。右は実用機の例です。

 

3)自動逆洗方式ろ過池

  • 阪神企業団尼崎浄水場の急速ろ過池 

 ここは重力による自動式の急速ろ過池です。自動式(最初に商品化したのは荏原製作所のグリーンリーフ)と呼ばれる,逆洗ポンプを持たず,代わりに逆洗タンク内に保持した浄水の水圧を利用するタイプも開発され,利用されています。

 外見的には,池が深くなる傾向があること,サイホンが設置されているのが特徴です。ちなみに,池の深さは深くなる傾向は水理計算とかしてないので確認はしてませんが,実物を見学した印象ではそう思うんですけど。

 ポンプを使用しないために逆洗の微妙なコントロールがしにくく初期捨水の際に微小フロックが漏出しやすいことがクリプト対策の面からどうか,という指摘がなされていたこともありますが,これはすでに問題ないことが厚労省にも確認済みとのことです。

尼崎では20〜40分程度の捨水時間をとっているとのことです。

 写真のようにRC造で造っているものが大きいのですが,ろ過機にもこの方式のものがあります。

【備考】



目次

急速ろ過法
 大規模な浄水場においてもっとも普及している浄水方法。

急速ろ過法派生法
 急速ろ過法の派生法について。

急速ろ過施設
 急速ろ過施設について。


備考・出典

 設計指針(リンク切れ)より。試験勉強用にまとめたメモから起こしました。また,全国各地の浄水場へうかがった際に,現場の管理担当者などからうかがった話(凝集沈殿のコツなど)も掲載。繊維ろ過機は移動しました。


更新履歴

  • 120815 新様式で作成。
  • 120610 高速化についてのコメントを修正。
  • 111028  施設構成をイラストにしてみました。画像を使えばもっと簡単になるんでしょうが...
  • 111028 サンドリバースシステム、リンク先変更。
  • 061010 自動逆洗の記事について最新情報に更新。


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