水道技術経営情報
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薬品注入 Chemical Feeding

 水道において薬品の注入を間違いなく行うことは非常に重要です。そのための設備についてとりまとめます。

  • 浄水用薬品
     ごちゃごちゃいろいろありますがご容赦。
  • 薬入室
     薬注室についてはこちらにあります。

【参考】


薬注計算 Chemical Feeding Culculation

 薬品注入設備の設計などについて取りまとめるための項目です。

1)消毒剤

(1)一般的な浄水用薬剤の濃度等

  • 各種消毒剤の塩素濃度(一般的なものについて)
     液体塩素99.5%,次亜8%,生成次亜1%の換算値を使用して塩素量として消毒剤の消費量を見る。

2)凝集剤

(1)凝集剤の種類

●アルミ系凝集剤

 凝集剤は大きくわけて,アルミニウム系,鉄系,その他のものがあります。水道において伝統的に使用されるのはアルミニウム系です。古代には明礬(硫酸アルミニウムカリウム・12水和物)が使われたこともあるようですが,特に硫酸ばんど(あるいは単にばんど)の歴史が長く,急速ろ過法は,アメリカにおけるばん土の開発をきっかけに広まったということらしいです。また,ポリ塩化アルミニウム(PAC)がわが国で開発(昭和40年ごろ)されてからは,凝集処理がそれまでよりも容易に行えるようになったとのことです。

 アルミは3価の陽イオンで,水中の荷電を中和する力が強いため,凝集剤としてよく使用されます。ただ,あまりに大量に入れるなどへたくそな使い方をすると,凝集剤がそのまま浄水に残ってしまうケースもあり,アルミそのもののリスク(因果関係は証明されていませんがアルツハイマー病との関係が疑われている)を重要視する向きには,アルミ系凝集剤をつかうべきではないのではないか,とする意見もあります。

 凝集剤のアルミニウム濃度は一般的なものについて以下のとおりです。いずれもアルミニウム消費量の換算値です。PACと書くと,海外の文献では粉末活性炭のことになってしまうので,最近ではPAClと標記することが増えています。固形ばんどは液体ばんどを結晶化させたものです。

  • 固形硫酸アルミニウム(固形ばんど) 15%
  • 液化硫酸アルミニウム(液体ばんど) 8.1%
  • ポリ塩化アルミニウム(PAC) 10.5%。

 硫酸ばんどとPACの違いですが,ばんどの方がアルカリ度と濁度条件にシビアで適生注入率の維持が難しい反面,ぴったりあわせるとPACよりも優れた凝集効果を得ることができる,といったところのようです。PACの方がこの辺のコントロールがシビアでないので万人向けということですね。比較的大規模で古い浄水場では,これらの特性の違いを考慮して,両方を効果的に運用している場合もあります。

●鉄系凝集剤

 鉄系凝集剤には,塩化第二鉄やポリシリカ鉄系凝集剤(PSI)などがあります。 

 塩化第二鉄はアルミ系より若干使いづらいのと,見た感じが茶色(鉄さび色)であんまりよくないのが欠点。ただしアルミを使いたくない場合に魅力的な部分があります。

 PSIは塩化第二鉄を凝集剤として使いやすいように改良したもので,シリカと鉄の割合でいくつかの種類があり,原水にあわせて使用します。詳しくは水道機工さんのページを参照ください。

  • ポリシリカ鉄系凝集剤 PSI(リンク切れ)@【水道機工株式会社】
     薬品注入量の計算など。まずは場所を確保。

3)酸剤

 酸注入は...後日。


4)アルカリ剤

1)遊離塩素対策としての消石灰注入率の計算法

 遊離炭酸除去によるpH調整方法にはアルカリ剤による薬品注入法と曝気法があげられます。アルカリ剤としては水道用ソーダ灰、水道用液体苛性ソーダ、水道用消石灰が用いられ、いずれもpH調整に対して有効です。

 扱いについては水道用ソーダ灰,パワーは苛性ソーダ,イメージは消石灰が優れます(少々贔屓目あり)が,ここでは消石灰の注入率の計算法を紹介します。

 消石灰1 mg/Lの注入によって総アルカリ度は1.35 mg/L増加し、遊離炭酸は1.19 mg/L減少します。 消石灰をX mg/L注入した時の水中の総アルカリ度、遊離炭酸とpHの間には次式が成立します。(水温条件25℃)

 pH=log ( A+1.35X )−log (C−1.19X )+log (0.08/(4.45×10-7))

※要確認、0.08⇒0.88ではないかとのご指摘をいただきました。ありがとうございます(091130)。

  • A:水中の総アルカリ度
  • C:遊離炭酸濃度

 地下水中の遊離炭酸濃度には季節変動があり、一般に夏季に高く冬季に低い傾向にあります。設計はさまざまな理由より冬期に行うことが多い(なぜかは考えてみてください(^o^))のですが,事例より,夏期の遊離炭酸濃度は冬期の2倍位まで上昇する(アルカリ度は1.5倍程度)ものとして計算しましょう。

 なお,注入率は最大と平均を算出することとしてください。前者は施設能力の決定に,後者は施設効率の算定に使用します。

【備考】
 さまざまな薬品注入率計算を総括していく予定です。まずは場所から。


薬注設備 Chemical Feeding Equipment

 薬品を注入するためにはタンクやパイプの中に薬注管を挿入してここから注入することが必要になります。このための設備にはいくつかのパターンがあります。

(1)薬注施設

1)薬品タンク

 薬品を貯蔵するタンク類は用途に応じていろいろありますが,対腐食性が必要なことから,液体の場合は,大規模なものでFRP製,小規模なものでPVC製がよく使用されるようです。いずれも製品で売ってるものをもってきます。

  • ピアゾ−ラ浄水場の二酸化塩素発生装置用薬注タンク

 下写真はイタリアの小規模浄水場,ピアゾ−ラ浄水場の薬注タンクです。防液堤の背が高すぎるような気もしますが,日本と大体同じですかね。タンク本体は少し簡素な気もします。

  • 薬品タンク例

 順に,PAC,硫酸バンドの例です。PACタンクは室内設置の例,硫酸バンドのタンクは屋外設置の例ということになります。 大規模な場合は屋外,小規模な場合は屋内設置が普通ですが,いずれにせよ中に保持する薬品に耐性のあるものが必要です。既成品で十分ですのでメーカーさんのサイトなどで調べてください。耐用年数は通常10年程度が限界ですので,水道施設のなかでも交換頻度が最も高い設備の一つです。

 

  • 炭酸ガスタンク(ボンベ?)の例

 炭酸ガスのタンクの例です。炭酸ガスはもちろん常温で気体になってしまうので,圧力で液化してあります。もちろん,高度な管理が必要で,室内に設置されています。ガスは中身に応じてボンベの色が決められていて,炭酸ガスは緑色ですので,緑の帯が入ってます。

 余談ですが,日本語でいうボンベとはドイツ語のボンベル,つまり爆弾がなまったものだそうで。ガス技術は兵器としての生まれた,ってことなんでしょうかねぇ...もっとも,タンクは戦車よりも水槽が先ですけど(^o^)

(2)薬注ポンプ

 薬注ポンプは少流量・定量ポンプを使用します。専用品がいろいろ出てます。

(3)薬注施設の注意点

 注意点として以下を指摘しておきます。

  • 薬品注入設備を設ける部屋には手洗い用水栓を設置すること。
  • 薬品注入設備を設ける部屋はできれば隔離するべきであること。換気は必須。
  • 劇物の場合は資格者の配置を前提とすること。
  • 薬注タンク液位 タンク液位が見やすい形式とすること。
  • 防液堤,もしくはそれに順ずる設備を設けること。ドレンはお好みで設けるが,設けた場合は管理をしっかりとすること。(屋外の場合,雨水排水の問題などからドレンを開けたままにしているケースが散見される。)

【備考】


(2)薬注管

 薬注管とは,水道のタンクや管の中に薬品を注入するための装備を指す言葉です。

1)落としこみ

 タンク内や流路に落としこみで注入する方法です。特別な設備は要りませんが,攪拌装置を付属したり,落としこみ流のあるところに設置しないと,注入した薬品が行き渡らずトラブルの原因になります。

  • 阪神企業団 尼崎浄水場の例

 現場では何を入れているのかを聞き忘れたのですが,後日職員の方からメールにて,pH調整用凝集助剤(アルカリ剤)の苛性ソーダと,沈澱池での藻類増殖を抑制のための次亜を注入している旨,お教えいただきました。(ありがとうございました。m(_ _)m)

  • スウェーデンのロボ浄水場の薬注管

 右写真はスウェーデンのロボ浄水場の薬注部で,導水路内に奔流を作りだし,ここにくし型に配置した薬注管から均等に行き渡るように設計されているようです。

2)サドル分水栓

 サドル分水栓とは,水道管に後付け不断水で穿孔し,ここに小口径の取りだし管を設けるための器具で,給水栓取りだしに使用する器具です。このサドル分水栓で注入対象の管に薬注管を挿入し,薬品を注入します。

 なるべく対象管の中心までこれを伸ばすことで,管内流による攪拌がある程度期待でき,特別な注入装置が必要ないほか,機材が安価で特別な施工を必要としないなどのメリットがあります。

 注意点としては,ポンプの注入圧力が十分であること,注入管の定期的交換が必要なこと,注入する薬品は水に溶解しやすく,拡散しやすいものでなければならないこと,などですが,あまり目だった問題はないようです。

3)エジェクター Ejector

 エジェクターとは,本管の流れによる吸い込み効果を利用して,注入しにくい薬品(粘土が高いものや活性炭スラリーなど)を吸い込ませ,注入する設備です。

 あんまりしょっちゅう使う設備ではありませんが,古い水理計算のテキストが出てきたので掲載しちゃいましょう。

●計算条件

  • q : 吸込量(L/日)
  • Q : 原水量(m3/日)
  • P : 注入率(r/L)
  • : スラリー濃度比率(%)
  • v : 管内流速(m/秒)
  • n : 粗度係数=0.012〜0.013
  • g : 重力加速度=9.8(m/秒

●エジェクター吸込量(q)

 エジェクタの吸い込み量は注入率と原水量で計算できます。

q=

P×Q×10-3×

1

1.0

× 1

●エジェクター圧力水量(q

 圧力水量(qp)は、吸込量(q)の2倍程度に設定します。吐き出し水量はもちろんq+qです。

 q=q×2

●エジェクター吸込管口径(DS),エジェクター圧力水管口径(D

 内面保護のための経験から,吸込管内の流速(v)= 1.0(m/秒)程度とします。必要な配管口径は以下の式で計算し,規格にある口径の管を採用すればよいでしょう。

S,D 4×q

π×v×60

× 1

●直管部損失水頭(λL),曲管部損失水頭(λC

 エジェクター部に生ずる損失水頭について。流速が分かれば計算できますね。

λL 124.5×n2

D1/2

   
L λL×

L


D
× v2
2g
λC 0.29
C λC× × v2
2g

【備考】
ギリシア文字使用。文字化けご容赦。



目次

薬注計算
 薬品注入量の計算など。まずは場所を確保。

薬注設備
 薬品注入設備の概要について。


備考・出典

構成を見なおしました。水理計算ではギリシア文字を使わざるを得ません。文字化けご容赦。


更新履歴

  • 120815 新様式で作成。
  • 111028 磯村、リンク先変更。


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