水道技術経営情報
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排水処理と回収水 Water Restore

 浄水処理の過程で分離した不純物が汚泥ですが,汚泥から分離された水も貴重な水資源です。ここでは,汚泥と分離される回収水について扱います。

【参考】


排水処理施設

 
 
 
 
排水槽
 
 
 

濃縮槽

 
     

 排水処理施設とは,水処理の過程で,除濁処理施設の機能を維持するために使用した作業用水(排水)を処理し,汚泥と水を分離する施設で,主に逆洗浄を使用する水処理法,急速ろ過システムや膜ろ過システムを使用する場合に必要になります。

 急速ろ過システムを例に,回収水が発生する場所について整理すると上のようになります。

1)排水槽

 逆洗浄プロセスでは一気に大量の水を流すことで行うので,直接濃縮槽に投入すると,非常に大きな容量が必要になってしまいます。そこで,排水槽を設けることで,急速ろ過池からの逆洗浄水をいったん貯留し,汚泥分を分離して,大部分の水を回収します。

2)濃縮槽

 濃縮槽は汚泥と水を分離するための中核設備で,排水槽の引き抜き水,沈殿池からの引き抜き汚泥をこちらでさらに静置し,沈殿池よりも時間をかけて固液分離を進めます。

  • 排水処理施設の例

 右の写真は膜処理施設で発生する逆洗浄水を処理するための排水処理施設です。濃縮槽だと思いますが,詳しい構造はちゃんと確認していません。下の写真は濃縮槽です。茶色いのは懸濁質(土粒子)やマンガンなどの影響と思います。建家のなかにはポンプ及びその電気設備が入っているようです。

3)その他の汚泥処理施設

 高分子凝集剤など新しい処理方法がACT21研究の成果によりある程度見えてきたことを受けて,汚泥処理の効率化についてもあらたな手法が開発されてきています。

  • 高分子凝集剤による排水処理施設実験

 

 上の写真は,オルガノさんによる,原水に高分子凝集剤(商品名オルフロック)と凝集促進剤(商品名オルアンカー,写真左)を添加して高速で除濁する処理の実験施設です。凝集促進剤は粒度を調整した無機剤で,凝集促進剤の粒度や,凝集剤の注入点,かくはん強度などにノウハウがあるんだとか。実験設備の管理はパソコンによるオンラインでおこなわれていて,現場管理は週1回。実際に視認した感じでは,フロックの沈降速度はものすごく速かったです。なかなかの優れものであります。

 ちなみに,このオルフロックというのは昨年発売されたものだそうで,水道用の基準に適合(アクリルアミドモノマー含有率0.005%未満)し,弱アニオンとノニオンのものがあるとのこと。実験施設で使用しているのはノニオン性のものだそうです。

【備考】
 実験施設を見学させてもらったので,コーナーを作って紹介させていただきます。併せて排水処理と回収水のコーナーを分離。注文を受けて写真を変更しました。(^o^)


回収水

 回収水とは,浄水処理の工程で取り除かれた汚泥と一緒に汚泥処理工程に移行した水を呼び,汚泥を濃縮していく工程で水として再度回収されます。単に排水と呼ばれる場合もあります,というよりその方が普通ですが,少し語感が悪いので,当ページでは回収水と呼ぶことにします。

 
 
 
 
 
 
排水槽回収水
 
 

場内排水

 

濃縮槽回収水

 
 
   

汚泥処理設備回収水

 

 急速ろ過システムを例に,回収水が発生する場所について整理すると右のようになります。

1)排水槽回収水

 排水槽は水を回収することが主目的で,回収された水は着水井,凝集沈殿池のいずれかに返送されます。ただ,排水槽からの回収水によって沈殿プロセスが影響を受けるのは好ましくないため,着水井への返送を前提としたほうがよいかと思います。

2)濃縮槽回収水

 濃縮槽で分離される水は排水槽よりも長時間滞留したものであり,また微細な濁質を含む可能性が高いものです。このため,濃縮槽の上澄水を返送する場合は着水井でなければならないでしょう。

3)汚泥処理設備回収水

 排水槽,濃縮槽は汚泥と水を分離するための設備です。これに対して,汚泥処理施設は汚泥の性状を向上させることが主眼です。よって,浄水場管理の立場から考えれば,汚泥処理施設からの排水は河川などに放流する方が自然です。特に,原水の汚染が進んでいる場合などは,有機物含有量が高く,また臭気を持ったりする場合がありますので,浄水フローに戻すのは少し抵抗があります。天日乾燥床からの排水であれば法的規制に引っかかることもないはずです。

 ただ,周辺住民が排水の流出に不快感を示すケースがあるので,浄水場もなるべくクローズ化するのが最近の流れなのだそうです。

 このような背景から,天日乾燥床の排水を着水井に戻すこと自体は普通に行われているそうですが,直接着水井に戻すことには抵抗があるので,一端濃縮槽などに戻す形を取ることがお勧めだそうです。ただ,最近は,せっかく汚泥に分離されたクリプトなどが再び水槽に戻る可能性を考慮すべきであるとの意見もあり,対応について研究されているようです。

4)場内排水

 場内排水とは,場内の降雨などを集めて流す水のことです。特に降雨開始後十数分程度の汚染されている可能性の高い雨水を排除できれば水質的には優れた水を得られますので,浄水場の原水として使用することも考えていいと思います。

 ただ,場内排水,特に道路排水を着水井などに戻すと,油が入ってしまうケースがあるので,場内雨水を利用することを考える場合は十分な配慮が必要となります。

【備考】


上下水排水一括処理

 上下水排水一体処理とは,浄水過程で排出される汚泥,あるいは排水の全部を浄水場内で処理することをやめ,一部を下水道に流して下水と一括処理する方法です。メリットは以下のとおりです。

  • 全体としては規模のメリットを利かせることができる。この結果,稼働率の向上,有効利用率の向上,経済性の向上などが期待できる。
  • 返送水を下水放流することで,カビ臭やクリプトなどリスク要因が浄水場内で循環する危険性を減少することができる。
  • 下水汚泥中のリン,マンガン,カドミウムなどの吸着保持性が向上する。また,汚泥の濃縮性,脱水性が向上する場合がある。これらは,浄水汚泥に含まれる凝集剤のはたす役割が大きい。

 デメリットについても簡単に触れましょう。

  • 手続き上の問題。廃掃法,水濁法のチェック。(私もチェック不足なので要確認。)
  • 下水道が整備されている,あるいは排水を受け入れられるような計画になっているか,能力を有していることが必要。近傍に幹線がない場合などには難しくなることもある。
  • 浄水場の水の回収率は若干低下する。
  • 汚泥の性状が通常の下水汚泥と比べて変化することにより,既存施設が影響を受ける場合がある。

 横浜市,京都市,神戸市などで事例があるそうです。e-Waterの研究テーマの一つとのことなので,詳しくはそちらを調べていただければ。

【備考】



目次

排水処理施設
 浄水処理の過程で発生する作業用水の回収について。

回収水
 浄水処理の過程で回収される水について。

上下水道汚泥一体処理
 浄水汚泥を下水道で一括処理することのメリットとは?


備考・出典


更新履歴

  • 120815 新様式で作成。


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