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給水区域の設定に関する考え方について。普及率についてもここで取り上げます。 【参考】給水区域の設定給水区域とは水道事業が事業を展開する区域のことです。水道事業の公益性を考えれば,可能な限り住民が等しく水道による給水サービスが受けられるよう未給水域を解消していくことが大前提です。新規の開発行為などによって給水区域外に需要が発生する場合は,給水区域を拡張するべきでしょう。筆者がとある山間の簡易水道の設計に関して現場調査をしていたさい,住民の方から「水道がないと嫁もきてくれん。がんばっとくれ」といわれたことは,非常に印象深い経験でした。 しかし,給水区域の拡張は,需要水量の拡大に直結する問題であり,水源の手当てや水道施設の整備などの資本支出を伴います。また,どうしても難しいのが,区域拡張のための資本整備を既存区域の需要者から得た料金収入に頼っていいのかという点で,さまざま議論されながらも結論はでていません。 また,いったん設定した給水区域内においては,水道法第15条,「水道事業者は,事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは,正当な理由がなければ,これを拒んではならない。」により給水義務が生じます。このため,遠隔地など著しく給水の困難な区域を給水区域に取り込んだり,水源の能力を超える範囲を給水区域に設定したりすることは,計画段階での十分な検討のうえ,これを避ける必要があるでしょう。 給水区域の範囲を決定する際に検討すべき事項について,簡単にリストアップします。 ●給水サービスの公平性(地域の連たん性) 給水サービスは公平に提供される必要があります。官業である以上。このことから,給水区域の設定は,概ね連たんする地域について,分け隔てなく行われなければなりません。よって,地形や行政区域界などによる分割のない範囲において,給水区域の設定は一括して行われることが原則です。 ●水源の能力 水源の能力に余裕がなければ,緊急避難的な措置として給水区域を制限したり,新規給水を拒否せざるを得ない場合があります。福岡県では,このようなケースから水道の給水拒否の是非が訴訟になり,水道事業体側が勝訴したケースがあります。しかし,このような制限は,やむを得ない場合に限定するべきです。 ●給水サービスに関する要求 水源の豊富で,かつ既存の集落である場合,水道事業の要望が比較的小さい傾向があります。料金が必要な水道の整備に拒否反応が出る場合もあります。逆に,水源の枯渇や悪化,転入住居の増加などが見られる地域では,水道の布設要望が強くなる傾向があります。住民の給水要望の状況も十分に確認しなければなりません。 ●給水の難易(地域の標高や遠隔地など) 水源に近く,標高が比較的低い等の理由により,水の供給が容易かつ低コストで行える地域については,給水区域に入れることが容易です。逆に,事業効率上の問題が大きく,生活用水の確保に支障がない場合には,給水区域外とするケースがあります。 ●開発行為 新規に開発行為が行われる場合にはその生活用水量の供給が必要となりますが,規模の大きい事業では新たな投資を伴うため,ディベロッパーに負担を求める場合があります。 ●他の事業との関係 当面給水区域に組み込む予定のない地域についても,将来にわたる整備方針については把握しておかなければなりません。現時点の水道給水区域,給水区域を拡張する予定のある地域,他の水道事業の給水予定区域,簡易水道事業による給水区域,専用水道による給水区域,給水できない合理的な根拠がある地域,に区分したうえで個別の事情を勘案して事業計画に反映しましょう。特に,給水区域に入れられない地域については,生活用水の確保に関する手立てを明らかにしておきます。 【備考】 普及率1)普及率の種類普及率は,言葉のとおり,地域に住む人に対する水道の顧客の割合を示す数字です。ただ,普及率を見る視点の違いから,3種類の数字が同時に成立しますので,間違いやすい数字でもあります。 行政区域内人口,給水区域内人口,給水人口の3つの人口指標から,3種類の普及率の相互の関係を示します。
水道の計画では,通常,給水普及率の目標を100%,水道普及率の目標を100−95%程度に設定します。 2)普及率の推移厚生省による全国の普及率は以下のサイトに示すデータが新しいはずです。
と他人任せすぎるのもなんなんで,グラフを作成しました。令和4年末で98.3%です。水道,簡水,専用水道の合計です。 水道創設の場合は,都市の性格と発展状況(例えば産業別人口等)の似た他都市の実績を参考として定め,拡張事業の場合は,過去の実績をもととして定めるのが一般的です。 ただし,配水体制が整備され次第,比較的早い段階で90%近くになるのが普通です。これは,水道事業開始時において新規加入者への負担金の減額措置など,料金優遇を設けることによってもたらされるものです。料金優遇は,あとから加入すると給水管の取り出し工事を別途行わなければならないのでコストがかかることを避けるために,一般に導入されています。 拡張事業の場合の目標普及率は,公衆衛生の向上や生活環境改善の立場から,できるだけ高い水準を目標とします。簡易水道施設基準では原則として100%,やむを得ない場合でも90%以上とされており,これは原則として上水道でも同じでしょう。 目標年次に至るまでの各年次の普及率については,各年次の配水管布設計画に基づく給水可能区域及びその区域における加入見込等を考慮して決定しますが,特に合理的な理由を設定できない場合は,比例補間による算定によってもよいでしょう。これは,途中年度の普及率が低く算出されることが財政計画的にはフェールセーフになるためです。 【備考】 |
目次給水区域の設定 普及率 備考・出典更新履歴
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