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公共事業の再評価システムをきっかけに,投資効果や経済効果の測定に関する手法について集めました。
事業再評価事業評価システムは,北海道,沖縄,国土,農水,運輸,建設,の6省庁(いずれも当時の名称)が,
といった政府サイドの指示をうけ,事業評価の実施要領細目および評価手法を策定し,新規事業採択時および事業途中段階の費用対効果の再評価を導入することとしたものです。 この流れを受け,平成13年12月,行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)第5条第1項の規定に基づき,各行政機関の長が定める基本計画の指針となるべき事項,並びに政府の政策評価活動において基本とすべき方針が,「政策評価に関する基本方針」として閣議決定されました。 この中で,政策評価は,「各行政機関が所掌する政策について,適時にその政策効果を把握し,これを基礎として,必要性,効率性又は有効性の観点その他当該政策特性に応じて必要な観点から,自ら評価を行い,政策評価の結果をはじめとする一連の情報を公表することにより,政策の不断の見直しや改善につなげるとともに,国民に対する行政の説明責任の徹底を図るものである」,「政策効果の把握に当たっては,対象とする政策の特性に応じた,適用可能であり,かつ,政策効果の把握に要するコスト,得られる結果の分析精度などを考慮し,できる限り,客観的な情報・データや事実を用い,定量的又は定性的に把握できる適切な手法を用い,政策評価の客観的かつ厳正な実施の確保を図るものとする」,とされています... 公式文書は曲解を防がなければならないので本質的に長ったらしく,くどくなるので仕方ないのですが,正直読む気になりません。要は,「必要な仕事を効果的に行っていることをわかりやすく説明せよ」ということのようです。 政策評価に関する法整備は意外にも最近で,「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成14年4月施行)が施行され,同法,及び「政策評価に関する基本方針」(平成13年12月閣議決定),「政策評価に関する標準的なガイドライン」(総務省,平成13年1月)などが整備されました。
(2)水道事業の評価方法 よく見てください。先ほどでてきた6省庁(当時)には,厚生省(当時)が含まれていません。厚労省は蚊帳の外ってわけでなんすかねぇ。 さて,水道分野の政策評価ですが,現行の指針,ガイドライン類では,「水道事業の費用対効果分析マニュアル(案) 平成14年3月」が最新です。この資料には(案)がついているのですが,これは,政策評価の手法は日々研究がなされている段階であり,「最新の知見を今後とも取り入れていく必要性」を考慮してこのようにされたとのことです。 ここでは,水道の効果について,「都市活動の維持」「生活環境の改善」「公衆衛生の向上」などの項目に整理し,これを事業内容に応じて,存在効果(水道の普及)と改良効果(水道の安定供給,水質の安全確保,供給水質の向上,経営の合理化,その他効果)で整理しています。 また,事業の評価要領については厚労省サイトをご参考ください。新規事業については原則委員会を設置(原則として、学識経験者等の第三者から意見を聴取するものとするとの規定)を設置しなければならないようです...
(3)事業評価関連サイト 事業評価に関するサイト。かなり詳しく要領などを掲載されていますので,改めて解説する必要はないでしょう。 【参考】 費用対効果分析「公共事業を対象に投資効果や社会的効率性を判定する手法」で,イギリスにおけるバリューフォーマネー(VFM=Value For Money)の概念が元になっています。つまり,投資金額に対し,どの程度の直接的,間接的な効果が得られるかを分析する手法です。事業再評価の中核を為す概念です。 ここでいう便益には,直接の便益(事業を実施した場合と実施しなかった場合の社会的費用の差)と,リスク回避便益(その事業が行われなかった場合に発生した可能性のあるリスクの低減効果),2種類が提案されています。 アカデミックに記述すると以下のようになります。わざわざ毎年分に分割して和を算出するのは,「社会的割引率」という年度にかかる係数を乗ずる余地を残すためです。
水道の建設によってもたらされる便益には,以下のようなものがあります。ただ,どのようなVFM算定でも言われることですが,「風が吹けば桶屋が儲かる」的なものであることは否めません。
たとえば,水道の設置によって増大される可能性のある雇用の増大効果や税収の増加など,連想されるような様々な効果やリスク回避を見こむ場合もありますが,これらの便益は特に計測が難しく,またレベル差があるという問題も内封しています。 水道事業の再評価などでもこのような点が問題になります。今後,情報の蓄積が必要な分野といえるでしょう。 【参考】 独自評価行政は,「経済的側面では対処できず,政治的側面で対処すべきではないような事象」を扱うことが本分です。戦後の混乱期以降,様々な努力によって行政的側面での対処が拡大されてきましたが,公正を主とし経済性を従とする本分は,時に経済的側面や政治的側面の不満足を招いてきました。 この対処として,いかにも行政的対処発想ではありますが,公共事業や行政効率を対象に,その評価を独自に行い,結果を公表しようとする動きは各種見られるようになってきています。 以下にその事例をいくつか示します。 1)アウトカム指標アウトカム指標とは,「事業によってもたらされる成果」を具体的に示そうとするものです。以前は,事業の規模等については,
で表現することが多かったのですが,これらの指標では,専門家以外では事業の効果を想像することが出来ず,公共事業を行う目的が不明確であると受け止められる原因になっていました。さらに,工事費や工事量で工事規模を説明する習慣が,公共事業を「飯のタネ」にしている建設業者への利益供与が目的であるような印象を与えていた大きな要因であったものと思われます(もっとも,景気対策としての公共事業はその通りなのですが...)。そこで,政策評価においては,事業の効果を実感できる波及効果で表現するべきという考え方が打ち出され,これを定量化するための指標を「アウトカム指標」と呼ぶようになりました。
アウトカム指標は,需要者のニーズという視点で効果を定量化して設定しなければなりません。たとえば,環境白書では,「利用者のニーズをどれだけ満足させたか(CS(Customer Satisfaction))」という利用者の立場に立ったアウトカム指標の確立も必要になっている。」と指摘しています。そこで,まず,地域の実情を調査し,需要者にとって重要と感じる項目や指標を洗い出し,数値の選択や目標を設定する作業を行います。 どのような指標をアウトカム指標として提示すべきかは,標準的なものがある,という話は今のところ聞きません。事業の目的として重要な項目であっても,既に実現されている効果を乗せることはできませんし,リスクに関する項目(発生確率のような,一見目に見えにくい項目)については指標化にあたっての注意と解説が必要です。また,前述のように,地域や事業によって事業に要求される効果はまちまちであってしかるべきですので,各事業ごとにアンケート等で調査するのが本来の姿かと思われます。ただし,従来のアウトプット指標の中これに近い役割を持っている指標としては,いくつかが考えられます。
また,ISOTC224で審議されている,水道サービスに関する指標などは,これに準ずる使い方をできるものと考えられますので,今後の展開には注目しておくべきと考えます。 また,厚生労働省の立入検査で行われる検査項目なども,主旨は同じですので応用可能かと考えられます。 アウトカムの必要性は前述のとおりであるが,流行に飛びつくように,なにがなんでもアウトカムが適しているわけではなく,場合によっては,インプットあるいはアウトプットが,あるいは従来指標である「普及率」が解りやすい場合もあります。また,アウトカムの指標造りやアウトカム評価計算に時間(手間・費用)をかけすぎるのであれば,本末転倒であることを十分に認識する必要があるでしょう。何が,従来指標やアウトプットでは不足なのか,アウトカムで何を評価するかを,明確に把握すべきである,という指摘を紹介しておきます。(このパラグラフはトッカリさんのご意見を拝借) 2)公共サービスチェックシート説明責任の範囲については種々議論がありますが,その基本概念についてはNGOなどによる提案も出てきています。アカウンタビリティを果たす一つの方法の例として,参考になるものと思われます。
論ずるより生むが易し,上記のページに掲載されたチェック指標を参考に,水道分野での公共サービスチェックシートを試作してみました。以下は,水源開発事業について公的補助を受けて事業を行う場合の例について試作したものです。(あくまでもイメージですので念のため)
3)民間度チェック横浜市水道局の取り組みで民間度チェックというものがなされているとのこと。HPを紹介します。
【参考】 関連する概念若干わかりにくい概念の類を整理してみました。あんまりまじめにやるのも大変だし...うーむ。 (1)ライフサイクルアセスメント/コスト LCAライフサイクルアセスメントとは,従来コストベースで把握していた考え方を拡張し,資材・建設レベルのみならず,維持管理や廃棄までを見込んで,コストのほかに環境影響をアセスメントをしようとする考え方です。 ライフサイクルアセスメントについては,ISOやJISによって標準化がされ,4つの段階に整理されています。
(2)外部経済効果外部経済効果は,主として負の影響を表す際に使います。たとえば,「環境負荷の外部経済効果を課税などの方法で内部化する」といった言い方で,税金により本来ははねかえらないコスト分を費用としてちゃんとかかるようにする概念を説明する時になどに使います。 でも,「外部経済」という難解な用語を使うと聞き逃してしまうでしょう。要するに,政治用語であるところの「経済波及効果」といえば分かりやすいんですよ。厳密な定義では異なるんでしょうがね。 水道でいうところの外部経済効果とは,水道などの事業が行われることで,生活環境が改善したり,地下水の収奪が抑制されたり,火災被害が食い止められたり,といった効果のことを総括していう言葉です。特に拡張事業の場合の水道整備費用は,原則として,既存給水区域の需要者から得た料金でまかなわれますが,このような外部経済効果の恩恵を受ける人から整備費用を得る視点について,十分ではないのではないか,との指摘があります。つまり,このような整備費用については税金など利用者負担でない方が適性ではないか,ということです。 実際,外国では水源に関する費用は国により直接整備されているケースが多く,水源開発費用が水道整備費に上乗せされる日本との料金格差の大きな原因になっています。 |
目次事業評価 費用対効果分析 独自評価 関連する概念 備考・出典水道施設整備事業の評価実施要領、政策評価・独法評価、ネットワークWHYNOT、横浜市水道局、土木学会コンサルタント委員会 更新履歴
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