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水質検査体制を新しく立ち上げる場合の注意事項や考え方について,体制の整備,検査室の設置などにわけてとりまとめました。水質管理基本計画の策定に係わった時に調べたり教わったりした情報がベースになっています。 水質試験体制の整備(1)水質管理における規制水道法において、「水道の管理の適正・合理化」に関する事項は、水質基準(法第4条)、水道技術管理者(法第19条)、水質検査(法第20条)、衛生上の措置(法第22条)等に規定されています。 ここでは、道事業者は、厚生労働省令の定める分析方法により、定期及び臨時の水質検査を行い、その記録を5年間保存することとされています。また、水質検査を行うために、必要な検査施設を設けるか、検査を委託することができます。 検査回数は、1日1回以上、色及び濁り並びに消毒の残留効果に関する検査を曜日、祝祭日に関係なく行うこととされ、水質基準に示された51項目については、水質項目ごとに検査回数が定められています。この辺の細目は水質基準のほうに掲載しましたのでそちらを参照してください。
【備考】 (2)検査担当職員の確保水質検査設備や室はあくまでも道具にすぎません。水質検査体制についてまず確保しなければならないのは優秀な検査担当職員であるといえます。分析機器を操作できる職員を確保すれば,日常の検査それ自体はある程度行えますが,水質検査の意図するところを見極め,検査によって得られた結果値が工学的にどのような意味をもつのかを検討するためには,高度な専門知識を必要とします。このような検査担当者を育成するためには,その修習について配慮することが必要です。 1)検査機器の修得に必要な期間 機器の使用に必要な技能の修得は,担当職員が技術系か事務系かによって大きく左右されますが,通常の機器であれば,パソコン程度の機器が使用できれば1〜3日間の指導によって修得可能です。専門職でない担当者の場合は,試料の前処理などの必要性や原理について修習しなければならないために,多少手間取ることが考えらますが,これらの前処理(公定法)は,化学系など専門系技術職が1名いれば十分教習可能ですので,準備日数もそれほど要しません。従って,技術系の職員が確保し,事前講習によって機器の操作について一定の経験を積んでおけば,1〜2ヶ月程度の研鑽で一応の対応が可能でしょう。 ただし,手分析の経験や試験の意味するところの理解度によって試験結果の信頼性が大きく左右されます。特に自動的に試験する機器については,試験に対する十分な理解が必要です。機器を運用するための研修は,各地の検査機関や衛試,日本水道協会,メーカーなどで実施されており,これらを利用することができます。例えば,日本水道協会では,「水質試験方法実技講習会」(平成7年度)として,GC−MS,HPLC,ICP,原子吸光光度計,イオンクロマトグラフの研修会を,一人50,000円程度で行っています。 日立製作所の講習メニューを紹介します。
2)資格者の配置とその支援 通常の事業者(私企業や財団法人など)が公的に水質などの検査を第3者に対して有償で行う場合,環境計量士の資格者が監督することが必要です。また,GC−MSなど一部の検査では,放射性同位元素Ni63(ニッケル63)を使う検出器を使用する場合があります(特にトリハロメタン類の検出感度に優れる)が,もしこれを使用するなら,放射性同位元素の使用に関する資格者をおくべきでしょう。 ただ,水道事業者として日常の管理を行う場合など,公共の用途に限っては,水道協会の講習を受講し特別認定をうけることで,資格者の配置を免除されます。このため,特に資格者の配置を要求されることはないのが現在の制度です。(これは近いうちに変更されるかもしれまぜん。要調査) これらの資格は非常に高度な専門知識及び技能を要求されるため,取得は容易ではありません。しかし,検査の意味を考慮し,汚染の生起や拡大の可能性,検査結果の定性的な判断などを行うことは,測定機器の習熟とはまた別の観点からも非常に重要です。資格者の配置もしくは担当職員が資格を取得できるような援助を行うことを前向きに検討すべきと考えられます。 水道GLPとは水道水質検査の実施体制の認証制度です。詳しくは別ページに移転しましたのでご参考ください。
【備考】 (3)機器の維持管理1)メンテナンス契約 当初装置の運転に慣れない間はミスによる機器の損傷などが特に頻発するものと考えてよいでしょう。(私の学生時代はひどいもんだったですし...)その間のメンテナンス契約及びコストには十分注意します。また,分析機器は概して非常にデリケートで,検査体制の立上げ当初は,分離カラムの故障や濃度調整の失敗などを覚悟せねばなりません。しかし,水質検査体制は,問題が発生した時に迅速に対応できるものである必要があるので,故障状態を放置しておくことは許されません。よって,機器の納入の際,機器のサポートサービスについて十分に調査し,維持管理契約の内容について確認しておく必要があります。トータルリスクを抑える方法の一つとして,リースも積極的に活用しましょう。 2)廃液処理 通常,水道水質の試験は浄水場やその近辺で行われます。このため,試験の廃液が浄水場や水源に影響しないための廃液対策が特に重要になります。一部の項目に使用する薬品は毒性の強いものもありますし,検量線を作成するために標準物質を作る場合などが考えられます。廃液回収体制とその費用について充分に確認することです。 【備考】 (4)検査機器の導入とそのステップ現在の体制が全面委託であって,ここから移行するのであれば,水質試験機器の導入は段階的に行う方がよいのではないかと考えます。まず人員の育成が先で,機器の導入は人がそろう目途がついたときでいいのではないでしょうか。使用頻度が高くない精密機器の寿命は概して短く,故障しやすく,ランニングコストも大きくなる傾向があります。検査頻度が低いのであれば,GC−MSやICPなどの機器を自前でもつことは推奨すべきではないと考えます。ただし,当初段階で導入しない場合の会計上の困難が考えられるので,この点については充分に見当することが必要になるでしょう。 各種試験設備の概要は以下に示します。
また,段階的導入を行う場合の一例を示します。
【備考】 (5)維持管理計画費目水質検査を行うために必要な維持管理費目の算定に必要な費目の例を示します。想像以上に維持費がかかるのがお分かりかと思います。 1)人件費及び諸費 原則で3人以上の試験要員が必要ですが,なかなか専門官を3名も持つのは大変です。 2)動力費(電気代) 導入した施設の稼動電力で計算してください。通常,大物は止めませんのでそのつもりで。 3)試薬類,及び消耗品類 これも検体数で計算しますが,見積もりとった方が楽です。 4)機器分析用キャリアガスなど(運用上必要なガス類) GC-MS ヘリウムボンベ 8〜12本/年 60,000円/本 見積もりに頼ってください。 6)メンテナンス契約 分析機器に関しては保守契約を締結し故障時の復旧を委託することが一般的です。契約内容は個々のケースにより様々ですが,昔とった見積もりでは,機器一式あたり1年間180万円(!)でした。実施基本計画策定時には十分考慮しましょう。
研修会,研究発表会などに参加して横のつながりをもつことが大切です。ネットなどで情報を収集できる体制も確保しましょう。 【備考】 耐震設計について 水質試験設備は地震時に落下し、破損しやすい。また、秤量設備等は振動だけでもダメージを受けたりする。 機器の落下で大損害というのはちょっといたたまれません。水質検査設備は雑然としやすいもの。地震時の機器落下を防ぐ手立てを講じてじておきましょう。
水質試験質の設計水質試験設備を本格的に備えるためには,専用の室が必要になります。通常の詰所とことなり,さまざまな機器や試料薬剤の搬入など,水質試験室を設計するための制約事項について整理します。
ある程度の規模を有する浄水場であれば標準的なサイズではないかなと。きれいに整理されていて好感が持てます。 (1)確保するスペース日水協の調査によると,平均的な水質試験施設の床面積は500−1,000m2とのことだったと記憶しております。(詳しくは忘れました...)1−2階に設置されることが多いのですが,これは試料の運搬の都合によるものと考えられます。人肩運搬するには水は結構重いですので,搬入は優先的に行えるようにしておきましょう。 (2)室の構成水質試験室を構成する個室の備えるべき特徴について整理すると以下のようになります。
【備考】 |
目次水質試験体制の整備 水質試験質の設計 備考・出典
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