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沈殿池とは,浄水処理を目的として貯留もしくはこれに近い水流の低下を起こし,沈殿しやすい重量物を落とす設備です。沈砂池は,特に取水場において,砂や流芥など大きな粒子を沈めて除去する設備です。対象とする物質の性質が違うので規模はかなり異なりますが,目的はよく似ているので同一でまとめました。 【参考】 沈砂池/沈澱池 Sedimentation Tank1)原理(1)沈澱池の設計条件 沈殿とは,流速を意図的に低下してけん濁物等を重力分離する単位プロセスです。処理能力は面積で決まるので広い用地が必要ですが,低エネルギーで効果的な固液分離ができ,また原水の変動に対して強い利点があります。 1)滞留時間(容量) 各種の沈殿池/沈砂池に類する施設の容量とその根拠,対象物質について。指針類を中心にまとめました。対象とする懸濁質のサイズや種類によって,滞留時間がかなり異なります。
このほか,容量については,貯留を目的とする他の構造物の項目も参考にしてください。
沈殿池の沈殿効率は,濁度成分の性状,粘性,比重,pH,アルカリ度,水温,浮遊物(大きさ,比重,濃度,凝集性),外気(温度,風)など。特に気をつけなければならないのが温度偏差で,原水の系統が切り替わったり,突然の降雨などで原水水温が急激に変化すると,その境目で濁度の流出が発生する場合があります。 設計時では,除濁率について把握できれば理想的なのですが,沈殿池による濁度の除去性能は原水の性状によって異なるため,一概にはいえませんし,また一般式などはないようです。単純に言っても,泥などの場合,藻類の場合でも,その沈降性には天と地ほどの差があります。設計指針などを見ても,沈殿池の濁度除去率に関する記述はありませんが,このような理由によるものと思われます。 このような事情から,沈殿池の除濁効率を建設前に把握したければ,原水を採取して沈降試験を行い,その流入,流出濁度のデータをとる必要があります。ただし,濁度は平時でも変動しており,降雨時には特に大きく変化しますので,供試水の採取ひとつにとってもかなりのノウハウを必要とします。 ただし,上水道の場合,かならず後段にろ過池(普通沈殿池であれば緩速ろ過など,凝集沈殿池であれば急速ろ過池など)を設けます。沈殿池の役割は,ろ過池の負荷を低減し,ろ過の効率を上げることですので,このような調査は常に必要なわけではない,ともいえます。 なお,国内の場合はそれほど気にしなくてもよいかもしれませんが,水温で粘性が変わることによる影響は,特に海外で施設を設計する場合は気をつけることが必要です。 沈殿施設の能力は表面負荷率(V0(表面負荷率)=Q(流量)/A(面積)[mm/分])で計算されます。つまり,沈殿池の能力は全て面積で決まるということです。よって,除去性能を上げるためには,
のような方法をとることになります。 沈殿池の除濁効率を求めないといけない場合は,沈殿に関するHazen(ヘーゼン)やFair,中川の式などいくつか提案されている理論式を用いましすが,へーゼンの理想沈殿池に関する押出モデルが一番単純で使いやすいように思います(学生のときに教えてもらってなんとなく覚えてるのはこれだけですし...)。詳しくは参考文献(リンク切れ)などをご覧ください。 このモデルでは,粒子の沈降速度をu,除去率をyとすると,完全に沈降してしまうほどuが大きくない範囲での除去率は,y=u/(Q/A)で示すことができます。 つまり,単純な話,表面負荷率を1/2にすれば,沈降速度が1/2までの粒子までは同じ効率で除去できることになります。ちなみに,表面負荷率を1/2にするということは,処理水量を2倍にするか,沈殿池の面積を1/2にするということです。 なお,この推計は,濁度粒子が均一径であり,沈降速度も一定とみなした場合の説明ですので,現実にはもう少し複雑な補正が必要になりますが,基礎的検討の範囲ではこれである程度判断できるかと思います。 【備考】 (2)沈澱池の事例階層式沈殿池とは,上下に2段以上の沈殿池を重ねることで,2倍以上の表面積を得る方式です。地上面積あたりの表面負荷率を増加させることができますが,特に下層の排泥やメンテナンスが難しくなり,構造的にも複雑なのがデメリットです。
硬水軟化処理,急速ろ過,緩速ろ過を直列に連結しているのが特徴の浄水場。写真からは分かりにくいとは思いますが,2段の階層式です。
傾斜版沈殿池とは,配水池の中に傾斜させた板を複数設けたものです。ワセダ技研が初めて商品化したと聞いています(まちがってたら教えてください)
傾斜版は,層数分だけ表面積を増やすことができます。傾斜版の表面に沈降した懸濁質はここで濃縮されることにより傾斜版の表面を滑り落ちます。傾斜版沈殿池は,沈殿池の性能を飛躍的に高めることができ,また取り外しも容易で構造物による階層式よりはメンテナンスが容易,既設池に追加可能,動力不要など数多くのメリットがありますので,現在では新設の場合,傾斜版など何らかの沈降促進装備の設置を考慮するのが普通です。 デメリットとしては、多少構造が複雑でメンテナンスが面倒になる、池の清掃時などに風の影響を受けやすい、構造的にやや脆弱なため濁度が非常に高い場合などに破損したり閉塞したりする場合がある、などが挙げられます。
少し不鮮明ですが,傾斜版の設置状況が見えるでしょうか。池の中央部の表面部位に設置してあり,手前,と整流壁直前,下部は空けてあります。 ここの傾斜板設備は,当初普通の凝集沈澱池だったものを改良したもので,上のバーがしっかりとRCで製作されているのが特徴ですが,これは風対策ですかね?ちょっとわかりませんが。
傾斜板を小規模な浄水場で設置している事例。設備の大小を問わず有効です。
傾斜管は,傾斜版と同様,沈降装置内に表面負荷率を増加するための設備です。この施設は,上向流で処理水が上がってくるのを傾斜管式の沈殿池で処理している例で,写真は管を通って上に出てきた水をとらえたものです。通常の供用条件ではこんなにきれいじゃないですけどね。
ここも傾斜版式の浄水場。というより,傾斜版等の設備を設置しない方がもう珍しいです。 ![]() 【参考】 |
目次沈澱池/沈砂池) 備考・出典高速凝集沈殿法について,急速ろ過法のページに移動。 更新履歴
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