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時系列分析とその手法についてとりまとめました。 【参考】 時系列分析1)時系列分析とは時系列とは,ある変量のデ−タが時間の経過順序に従って並べられたものをいい,「過去の実績を並べる」ことを指す言葉です。 時系列(傾向)分析では,横軸に時間,縦軸に目的変数をとり,現在までの実績デ−タの傾向(トレンド)をよりよく表す式(傾向線,理論曲線)を見つけ,将来もその傾向が続くものと仮定して将来性を予測する方法です。 時系列分析は,人口,水量,原単位のほか,これらの変動要因の将来値を予測するためにも多く用いられます。水道施設設計指針に掲載されていることもあり,水道事業の需要予測にも広く用いられています。計算が簡便で,10数年程度の短期的な予測であれば十分に適用可能な予測値を得られる点が大きな特徴でしょう。 2)時系列分析のメリットと問題点時系列分析は,認可申請などの場合では優れた特性を発揮しますが,使い方を誤るとおかしな計画の原因にもなります。時系列分析のメリットと問題点は以下のようになっていますので,よく把握しておいてください。
3)時系列の種類(計算式系)傾向線や理論曲線式には,水道施設設計指針に例示される5つの式系を用い,実績データに適用した場合の適合度を相関係数,平均誤差の大小などによって評価して、最も適合する採用する式系を選択するのが普通です。傾向を十分に反映できるよう,特異値を除く,データの期間を考慮する,などの工夫を取り入れるべきでしょう。 ただし、最近では、需要減少の時代にあわせて、ロジスティック曲線式を増減逆式として適用する通称「逆ロジスティック曲線式」(ぶっちゃけロジスティック曲線式そのものですけども(汗))もよく使用されているようです。この他にも需要減少を表現できるようないろんな式が提案されています。
なお、指数曲線式やロジスティック曲線式を適用する場合、飽和値Kをどう設定するかで結果が決まってくることもあり、Kをどのように設定するのがよいかと質問を受けることもあります。これについては、私は、トレンドの傾向から計算するよりは、適用対象地域の特性から決めるのがよいかと考えています。たとえば人口の推計であれば政策的な目標人口等を適用する、需要の原単位であれば目標とすべき他の事業体の状況を適用する、といった塩梅です。相関係数と同じ要領で数学的に誤差が最も小さくなるように計算することも可能ですが、得てして実態とかけ離れてしまうので、まあ、趣味の世界かと。 4)計算方法時系列分析の計算でもっとも適当な係数を算定するためには最小二乗法を使用することが一般的に行われます。最小二乗法とは,バラツキを有する複数のデータをもっとも誤差なく説明できる直線式と,そのバラツキの度合い(相関係数)を求める方法です。 説明変数(この場合は初年度を1,以降年度を2,3.....とする。計算を簡易にするために1から始めない場合もあります)をx,目的変数(この場合は実績の人口)をyとすると,
のa,bは,
を解くことで得られます。年平均増減数による推計はこの計算によって得ることができます。 また,べき曲線式による推計,ロジスティック曲線式による推計は,両辺の対数をとることで,y =ax+b の形を作り,同等の計算処理を行っています。ただし,ロジスティック曲線式を使用する場合,飽和値であるK値を適切に設定することが必要です。 このほか,年平均増減率は,初年度のデータと最終年度のデータの比率の年度乗根を一年あたりの増加率として求めます。修正指数式では,10ヶ年のデータを3群に分けて3点を決め,この3点を通る指数曲線を求める,いわゆる3点法が紹介されています。 計算方法の詳細については,水道施設設計指針などにも詳細に示されているので,こちらを参考にエクセルなどで作ってみてください。 5)計算結果(式系)の選択ここから先は,時系列分析そのものの意義についてあえて誤解を怖れず書きます。 5式の(あるいはそれ以上の式系を使用する場合もふくめて)どれを使用するかについては,相関係数や平均誤差の小さいものを使用する,というのが「説得力」があります。 ただ,年平均増減数以外については,本当は相関係数自体が本来は存在しないはずで,比較のための便法として計算した値を使用せざるをえません。さらに言えば,相関分析自体には論理的にはあまり意味がありませんので,それにとらわれるのもどうかと思います。 相関係数を基礎としながらも,現地の視察やヒアリングを重視し,実態に合わせた推計値を採用できるよう努力しましょう。 6)時系列分析を適用する場合の重要な注意点「相関分析自体には論理的にはあまり意味がありません」について,もう少し詳しく述べましょう。 トレンドは原理的には推計というより,あくまでも過去10年の趨勢値です。よって,統計的な有意性なんて屁理屈以外のなんでもありません。傾向がこの程度だからとりあえずこれで行っとく,程度のものです。 また,大前提として,トレンド計算は直線回帰が原則であると考えてます。指数式とか他のロジックで言うところの相関係数は,指数処理をした数値について相関が高いだけで,これが,本来の相関分析の相関係数と果たして同じ意味を持つといえるのか,私としては懐疑的です。 このように,使用する上では,しっかりとした大人の判断ができることが大切ですし,経験上適切な範囲を意識することが必要です。たとえば,期間では,10年程度を超える期間であれば適用しずらくなります。相関係数の高いのを使う,という考え方それ自体には合理性はありますが,相関係数があんまりかわらないなら,上二桁程度でまるめて同じにしてしまうのもひとつの方法です。その程度のものです。 時に,需要推計の審査にあたって,相関係数が高いけども数字的には妙な計算結果をどういう理由で排除しているのか,などという指摘を受けることがありますが,統計的判断なんてものはもとよりありません。合意のためのロジック以上のものではありません。よって,明らかに現実的でない場合は当然ハネられてしかるべきです。審査担当者がこのような大人の事情をわかってくれる頭が柔らかい人なら,このような意味について説明できますが,頭の硬いヤツならこれはどうしようもない。 じゃトレンドなんて意味がない?いやいやそうではないです。計算が簡単で,使い方を誤らなければそれほど大きくずれませんし,他の予測モデルより恣意性が少ない(数字を意図的に操作しにくい)点は,特に公共事業の場合は大きなメリットといえるでしょう。 【参考】 |
目次時系列分析 備考・出典更新履歴
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