水道技術経営情報
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地震・噴火 Earthquake & Eruption

 水道施設の地震・噴火による影響に関する情報を集めます。簡水協会から火山災害への対応をとりまとめた指針が00年4月上旬に上梓されたのですが,その当日に有珠山災害が勃発。なんたるたいみんぐ...

【参考】


地震対策

 地震の十分に信用できる予測は非常に困難です。このため,地震対策は主として,古地図や診断などによる被害想定と,地震が起っても現在の施設の能力が維持できるような事前の施設整備によるものとなります。また,地震は基本的に一過性の災害であり,災害の規模にはよるものの,応急体制を組んで復旧に全力をあげることにより災害を解消しなければなりません。必要な費用は極端に大きいのですが,地震力に耐えられる施設の整備を通じ,地震被害の軽減を図ることが抜本的対策です。

 災害対策は,平時,事前,直後,事後の4段階で整理することができます。

  1. 平時−災害の兆候が全くない時点。
  2. 事前−災害の生起がある根拠をもって時期的に特定された時点。
  3. 直後−災害の発生直後。
  4. 事後−災害発生から数日以降経過し,復旧について検討する余地ができた時点。

 水道におけるもう一つの重大災害,渇水と比較できるよう,災害対策を併せてまとめました。適用については柔軟に。

項目 地震 対応策
平時 事前 直後 事後
水源,給水拠点の確保
    構造物,特に消毒設備の耐震化
  ×   緊急代替水源の確保
配水調整や復旧の可能な配水施設整備
 
    配水池,応急給水設備の整備
    施設の耐震化,制御の複式化
    配水池容量の増強
    送水管路の耐震化
    配水系統間,他都市との相互融通
    配水管網整備,断水ブロック設定
広報・復旧のできる管理体制

(1)本部対応
   

×   対策本部の設置,応急体制の整備
× 他事業との協力,応援,受入体制
× 広報,災害弱者の把握
× 長期的被害予測(施設の検討)
× 短期的被害予測(体制の検討)
    被害状況調査報告,点検,記録
    補償,義援金の取扱い
      恒久的復旧計画策定,執行
広報・復旧のできる管理体制

(2)現場対応   

× 情報,図面整備(配管,弁)
× 職員の教育と訓練,役割の明確化
× 機材,人材の事前確保,連絡体制
× 給水拠点の設置,給水車の調達
× 緊急代替水源の活用
× 水質管理,水質の確保
× 消防水利への配慮
    漏水調査,修繕,規格の統一

注) ○:有効かつ必要,△:望ましいが困難,×:有効だが困難

1)平時対応

 平時対応の中心は耐震化技術です。まずは研究事例についてまとめます。

 地震への備えについては,施設の耐震化など地震の発生を前提とした整備が必要です。しかし,そのような施設の整備には大きなコストがかかりますし,リスク対応のコストというものは効果が測りにくく,平時は冗費にみられがちで,全面更新という方法はなかなかとれません。

 そこで,震災の経験を分析し,耐震化対策については,以下の3段階で対応することになっています。

  1. できる限り早急に補強すべきもの。(構造物の調査,補強,転倒防止策,耐震管の検討)
  2. 概ね5年以内をめどに整備補強するもの。(基礎の強化,耐震管の採用)
  3. 計画的に整備補強を進めるべきもの。(系統間連絡,ブロック化)

 また,水道施設の耐震化には大きなコストが必要なため,地震時の被害を予測し,危険度が高い部位から対応しようという研究が盛んに行われています。

  • 第52回全国水道研究発表会−災害診断と対応(リンク切れ)
     研究発表回インプレッションより。

2)事前対応

 通常,地震は突然やってきます。よって,地震の場合は渇水など他の大規模災害と違い,事前対応が難しいです。地震予知などの研究はさまざまなされておりますが,ここのところ少し旗色は悪いようです。

3)直後対応

 直後の対応としてはもちろん被害の復旧が第一義にありますが,その成否はそれを担当する人を如何に運用するかにかかっています。施設の耐震化とあわせ,いつ大地震がきても対応が可能なように早急に組織的防災体制の強化を図ることが必要でしょう。ヒト,モノ,情報の確保がその鍵を握ります。

  • ヒト=命令系統の確保,初動体制の確保,バックアップ人員,応援の受入れと配置,ボランティアの受入れと配置
  • モノ=応急給水対策資機材,緊急貯水槽,
  • 情報=管理図面,台帳の分散管理,資機材規格情報の公示,広報,義捐金
  • 応急給水栓の事例

 阪神企業団尼崎浄水場に設けられた,市民用の応急給水栓。給水車用の消火栓と併せ,このような水栓を設けておくことも有効なPRかと思われます。

 ボランティア対応など日ごろの訓練がなかなかできないものについては特に研究が必要です。2000年の鳥取西部地震では,中国地方の水道に関する研究会という横断的な取組みがあったため,比較的早い段階での応援と,その経験を活かしたノウハウの構築が得られた(リンク切れ)と報告されています。

 また,関連団体でも,地震直後の資機材の融通などについての情報提供窓口を設置されています。水道技術研究センターにもあったと思ったんですけど...

  • 新潟県中越地震に対する(社)日本水道協会の対応について(リンク切れ)@【日本水道協会】
     緊急派遣の状況など。日水協が窓口になり対応されています。今回の地震では水道総会に重なったので,ホント大変だったろうなぁ...
  • 災害・事故緊急連絡窓口(リンク切れ)@【水団連】
     緊急連絡窓口のサーチシステム。資機材などの調達のアシストです。

 危機管理に関するページも参考にしてください。

  • 危機管理
     危機管理対応の概念等について。

4)事後対応

 地震からの復旧においては,「早く大量の水」を確保することが重要です。というのも,飲み水はペットボトルなどでなんとでもなりますが,消火用水,生活用水など,量が必要な用途は水道でなければカバーできないからです。阪神淡路大震災の教訓として、住民が我慢できる限界期間から判断すると、応急復旧は4週間以内に完了させなければならない第5回水道技術国際シンポジウム講演「新しい世紀を迎える水道システムの再構築」(神戸市水道局)−ということです。実際,阪神大震災では,全面復旧に2ヶ月を要しているとのことで,これは実体験に基づいた貴重な経験です。

 同じく阪神大震災の経験でいうと,取水,浄水,導水施設への被害は軽微でした。しかし,配水施設,特に管路の多数が損壊し,地震直後に全域で断水しました。神戸市の展示などを見ても,破損した管体やバルブなど,通常ではありえない大きな力がかかったことが伺えます。

 事後対応の中心は,このような被害の把握に基づく施設全体の再構築に傾けられると考えられます。

【備考】



目次

地震対策
 地震対策について整理総括。


備考・出典

  • 耐震設計指針など。センター報告書にはさまざま耐震化に関するレポートが出ています。また,水道公論では地震対策関連記事が多数。2001年3月号−米子地震の教訓,災害対策について特集。2001年5月−日本の地震と噴火の年表を掲載。2001年9月-10月−日米水道地震対策ワークショップ特集。

更新履歴

  • 170614 リンク先変更。リンク切れ削除。
  • 120910 新様式で作成。
  • 111114 防災科学技術研究所:リンク先修正。防災総合研究部→総合防災研究部門。耐震工学研究室→兵庫県耐震工学研究センター。
  • 111114 日本地震学会:リンク先修正。


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