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藻類 Algae

 各物質に関する情報をとりまとめたコーナーです。片っ端から集めた情報を載せる予定です。


水道への影響

1)水質基準項目

 藻類としての基準値はありません。ただし,臭気について異常でないこと,とされていますので,臭気に関して検討することが必要でしょう。

 某市における臭気強度(TOX)と苦情の関係は,経験上以下のようだそうです。TOXとは,臭いがしなくなるまで希釈した倍率です。

:分かる
20〜30 :苦情の山
50 :閾値
100 :原水では出たことも

 カビ臭の防止を図る場合の条件は,環境庁によると,窒素0.2mg/L,リン0.01mg/Lと聞いています。

2)毒性や障害

 藻類には非常に多くの種類があります。代表的な藻類と障害を以下に個別に示します。主として,除去しにくい軽い懸濁質となってろ過閉塞など浄水施設の障害を生ずる,それそのものが臭気を発生する,などの害がありますが,もっとも大きな障害は,池内に有機物が増えることで酸素の必要量が増え,結果的に嫌気状態を発生してしまうことでしょう。この場合,水源水質が著しく悪化します。

 また,欄藻類の一部にはミクロキスチンのような強い毒性物質(塩素で分解するようですが)を生成する藻類もいるようです。私は余り詳しくないので,見つけたサイトを少し紹介します。

  • 衛研レポート@【兵庫県立健康科学環境研究センター】(リンク切れ)
     感染症などが専門のようですが,ミクロキスチンに関する詳しいレポートがありました。
  • 微小藻の世界【国立科学博物館】
     凝ったページ。藻類の写真が見られます。
  • 淡水珪藻画像集(リンク切れ)
     ケイソウ類の写真集。個人サイトのお手本みたいなサイトれす。

●珪藻類

 淡水,海水また土壌中にもおよそ水分のあるところならどこでも出現し,種類数も非常に多いとされています。また,河床の石礫に付着する水あかを構成する代表的藻類で,水質浄化に重要な役割を受けもち,水生動物の主要な飼料ともなります。しかし,種類によっては,水の華を形成するもの,凝集沈殿による除去が難しいもの,ろ過閉塞を起こすもの等がいます。

●緑藻類

 緑色を呈し,クロロフィルaとb等,陸上植物と同じ色素類を含有します。湖沼等のプランクトンとして季節的に著しく繁殖し,緑色等の水の華を形成するものもあります。また珪藻類と同様に凝集沈殿による除去が難しいもの,ろ過閉塞を起こすもの等がいます。

●藍藻類

 湖沼等でプランクトンとして季節的に著しく繁殖して水の華を形成し,水の色を変えるなどするため,水質汚濁の指標種になっています。特に水面に青緑色の粉を撒いたようになり「アオコ」と呼ばれていますが,この種が原因で起こることが多いようです。大繁殖すると,水のpH値が9以上に上昇したり,青草臭をつけたりします。また,藻体の浮上性が強く,凝集沈殿では十分に除去されずろ過池を閉塞させたりすることがあります。ミクロキスチンを生成するのも藍藻類の一種だそうです。

3)汚染原因

 藻類は,ある程度滞留時間がれば,光と栄養塩があれば,空気中の二酸化炭素を利用して自栄養で増殖します。藻類そのものが水域に流入することはあまり考えられません。

 植物の3大栄養である,窒素,リン,カリのうち,自然界で不足しがちなのは窒素とリンですので,これらが供給されるかどうかが鍵になります。

4)処理方法

 藻類対策にはさまざまな方法がありますので,次項にて取りまとめます。

5)検出方法

 濁度やクロロフィルaのなどの量で定量し,顕微鏡で種類を同定します。また,発生する臭気物質(2-MIBやジェオスミン)などで判断する場合もあります。

【備考】


藻類対策

 藻類対策には,水源対策(ダム内対策)と浄水場内対策の2つの段階があり,その体系は以下のようにまとめられます。

 各対策について,以下に個別にとりまとめます。

(1)抜本対策

1)水源域の汚染抑制による方法

 水源からの栄養負荷があると,ダムのように滞留時間の長い環境でこれが繁殖するのですから,負荷を取り除いたり,低減したりすることがもっとも抜本的な対策です。水源二法などではこのような思想に基づき,水道事業者が積極的に水源対策をとることを求めています。ただし,対象範囲が広く,時間とコストを要する恒久的対策であることから,現場の状況への即応には向きません。

(2)長期的対策

 抜本策を適用するには流域全体の改善が必要なため,おいそれと効果が得られるようなもにではありません。よって,次善の策として,水源池内での水質の改善を図る方法が提案されています。

1)水の循環を促進する方法

  • ダム水強制循環設備事例

 貯水循環は,エアリフトやポンプ等を用いて空気を吹き込みながら貯留水を人工的に循環させることにより,貯留水の水質改善を図るものです。藻類の増加を抑制することはできませんが,藻類が増えることにより発生しやすくなる嫌気状態を抑制して栄養塩類の溶出を抑制したり,藻類の死骸の分解を早めるなどの効果があります。

 機能より,全層曝気循環法,深層曝気循環法等があります。深く狭いダムであれば効果が大きいのですが,浅く広いダムだとダム内の水循環の効果は少なくなる傾向があります。比較的コストは安く,薬剤散布がなく環境負荷がないので,常設設備として予防的に設置することができます。太陽電池を利用するなど,動力に工夫を凝らしたケ−スも散見されます。

2)底泥からの栄養供給を抑制する方法

 りん等栄養塩類の有力な供給源である底泥を浚渫除去するもので,ポンプによる底泥の吸引や貯水位が下がった時の浚渫等があります。水質悪化の根本原因を除くためにある程度効果的ですが,特に小規模な水源では作業時に水質が悪化すること,費用が比較的高いこと,浚渫した底泥の処分が必要なこと,そしてなにより,時間がたてばまた底泥が堆積することなどの問題があります。

 関連手法として,底泥を固化しりん等栄養塩類の底泥からの溶出を防止する方法もあります。

3)生物を利用する方法

 ホテイアオイ等を植栽して栄養塩類の除去と遮光を図る方法,植物プランクトンを主として捕食するソウギョ,ハクレンなどを放流して藻類の抑制を行う方法等があります。前者はホテイアオイの回収が,後者では魚の継続的繁殖が問題になりますが,生物活動を利用する場合の共通の課題として,人の都合で制御することが難しい,という特徴があります。また,そもそも大幅な改善は見込めないのが普通で,ほかの対策の補完として採用するのが適当でしょう。

(3)応急対策

 ここまでに提示した方法は藻類そのものの発生を抑制する方法ですが,このほか,急に藻類が増殖した場合への対応策として即時効果を得たい場合があります。

1)薬剤散布による方法

 薬剤散布は硫酸銅,塩素等をダムに散布して,生物の増殖を抑制する方法です。水道専用の貯水池などでは,人体への毒性が低くい銅散布が有効です。ただし,ダムが農業用としても使用される場合は適用できないので注意が必要です。

2)藻類等を放流する方法

 増殖した藻類を含む上層水あるいは栄養塩類や濁りを含む底層水を適宜放流することにより水質の一時的改善を図る方法です。十分な容量と余剰水量を湛える場合に適用できますが,得てしてこのような状況では水質の悪化は発生しない(渇水時のように水が少ない方が水質も悪化しやすい)ものです。また,下流側利水者への影響が大きい点も無視できません。

(4)取水,浄水での対応

 水道施設は本来藻類などへの対応能力を有しています。ただ,これらの障害が発生しやすい水源であれば,それに対する備えを十分に強化しておくことが望ましいと言えます。藻類が多く侵入する水源を使用する場合は,以下のような設備を有することが必要になります。

1)侵入防止,侵入抑制

 取水時にフェンス(オイルフェンスのようなもの)やスクリーンなどで極力取り除きます。ダムからの直接取水の場合は取水口からの除去が必要になりますが,ダム水利分を河川下流で取水する場合は,極力施設への侵入を防ぐことが重要な手段です。

2)殺藻

 塩素や硫酸銅などの薬剤により殺藻し,沈澱処理などの浄水プロセス(固液分離プロセス)で除去します。基本的には安価で,しかも少量で処理効果のあるものほど良いことになります。一般に用いられている薬品は,塩素剤,硫酸銅等です。

塩素剤
 消毒に使用する塩素剤には,プランクトン藻類,細菌類に処理効果が大きく,しかも速効性があり,連続注入にも便利です。水道施設が消毒用に常備している点も有利に働きます。しかし,太陽光線や水中の被酸化物により消失するほか,動物やある種のプランクトン藻類では磯臭い異臭を生じたり,塩素に強い藻類の繁殖を誘発するなどの欠点もるようです。

●硫酸銅
 硫酸銅(銅イオン)は薬効に持続性があります。また,人体に対する毒性が藻類と比べて著しく低い点も有利です。ただし,効果の現れるまでにかなりの時間を要すること,溶解プロセスを持つ必要があること,銅イオンに強い藻類の繁殖を誘うこと,などが欠点として挙げられます。

●その他
 多くの有機化合物の殺藻剤が開発されているようですが,これらの使用は浄水中に混入する可能性があり,未だ毒性の情報についても十分でないので,極力使用すべきではないと考えられます。

3)マイクロストレーナ

 マイクロストレーナとは,金属製または合成繊維製の微細網を用い,プランクトン藻類のうち比較的大型の藻類や地下水性動物等をろ過して除去するものです。長毛繊維ろ過,マイクロフィルターなど,いくつかの装置が製品化されているようです。

4)凝集沈殿・ろ過方法の工夫

 そもそも藻類が発生するような水源では緩速ろ過は適用できません。急速ろ過法でも,藻類によって生成するフロックは軽くて壊れやすく,沈降性が非常に悪いうえに,特に微細なものがろ過池を通りぬける危険があり,このときに凝集剤を大量に抱え込んでしまうことがあるとされています。いいとこなしですねぇ...

 このための対応として,凝集沈殿処理を二段化したり,多層ろ過を採用したりするケースがあります。また,加圧浮上方式(水に空気を圧入し,これを減圧して生じた気泡を懸濁粒子に付着させ,見かけの密度を下げて強制的に浮上させ,分離する方法)の適用を研究しているところもあります。

5)遮光

 日光を遮って藻類の増殖を制御する方法です。日光は藻類が増殖するための重要な要素ですので,遮光は藻類対策の最も有効な方法のひとつです。ただし,沈殿池内での増殖抑制には効果的ですが,施設内に侵入した藻類の除去には効果がありません。

 遮光は単に光を遮るだけなので特に難しい配慮とかは不要ですが,広い面積を対象とするため,如何に低コストで水面を覆うか,そしてその状態をメンテナンスフリーで維持するか,が問題になります。以下に代表的な方法を示します。

  • 覆蓋を使用する方法
     池に屋根をつけて蓋をしてしまう方法です。メンテナンスが特に必要なく効果も持続的で確実ですが,もっともコストがかかるので,遮光だけの目的でこれを実施するのは少し気がひけます。寒冷地での凍結対策やセキュリティとしての位置づけを併せ持たせる場合に適用されることが多いようです。屋根の上に太陽光発電を設置するようなケースもあります。
  • 遮光シートを使用する方法
     池の上にシート状の遮光材を展開する方法。シートなのでコストは安く済みますが,どうしても脆弱なので手間はかかります。また,管理が悪いと,シートが破損したり流出したり絡まったりするので,それなりに覚悟が必要な点は否めません。
  • 植物を利用する方法
     ハス類のような,面積の広い浮標植物抽水植物を利用して水面を覆う方法。自然湖沼などで,遮光効果を期待して実施されるケースがあります。ただ,生き物なので,真剣に維持管理しようとするとものすごく大変ですし,冬になったら枯れてしまったり,増えすぎて収拾がつかなくなったりするケースの方が多いような気がします。
  • 遮光フロートを利用する方法
     水面に一面に広がるような形状(六角形等)のフロートを投入する方法。保定のための手段を講じなくとも,勝手に水面を覆ってくれる点がなかなかユニーク。自分で使ってみたことはないですが,工水協の研究発表会や水道展などでみた感じではなかなかよさそうです。

【参考】



目次 

水道への影響
 基準,毒性や障害,汚染源,対処法,検出法について。水道としての視点からとりまとめました。

藻類対策
 藻類対策として,ダム水源水質改善に関する情報を総括。


備考・出典


更新履歴

  • 120910 新様式で作成。
  • 111114 兵庫県立衛生研究所→兵庫県立健康科学環境研究センター
  • 111114 淡水珪藻画像集:リンク先修正。
  • 050313 工水の研究発表会を受けて遮光関係を追記。
  • 010220,アサノッチのもらった資料を展開。これに追記など。


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