水道技術経営情報
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人災 Human Error

 ここは,人災,すなわち人間が原因で発生しうる危機について集めました。人的災害と一言でいうのは簡単ですが,実はいろいろあります。経済被害,事故などを取り上げますが,究極の人災である戦争やテロは別ページに分離しました。


事故 Accident

(1)配管工事事故

1)事故の発生状況

 建設業における事故は減少の傾向をしめしておりますが,撲滅とはなかなかいかないようです。労働災害の実情については,以下のサイトでみることができます。

 このうち,上下水道関係のデータは以下のようになっています。第1位が土砂崩壊,第2位が建設機械,第3位が墜落,となっています。

  H27 H26 H25 H24 H23 平均 事例
土砂崩壊等 5 3 3 4 1 33.3%  配管時の地山崩壊など
建設機械等 3 1 2 2 1 18.8%  バックホウ,ブル,ローラーなど
墜落 0 1 3 0 2 12.5%  開口部からの墜落など
飛来落下 1 0 1 0 3 10.4%  クレーンからの落下など
自動車等 0 2 1 0 1 8.3%
クレーン等 2 1 0 0 0 6.3%
倒壊 0 1 0 0 1 4.2%  
取扱運搬等 0 0 0 0 0 0.0%  
電気 0 0 0 0 0 0.0%  
落盤等 0 0 0 0 0 0.0%  
爆発火災等 0 0 0 0 0 0.0%  
その他 0 2 0 0 0 6.3%  酸欠,溺れなど

2)事故の防止対策

 作業計画の検証とその周知徹底が大切と伺っております。簡便にまとめると以下のような項目になります。

  1. 現場責任者の明確化
  2. 作業計画の策定と検証(特に工期を確保)
  3. 職長による作業内容の確認
  4. 人員,資材,機材の配置
  5. 作業計画の確認と周知
  6. 変更点への対応と周知
  7. 不安全行為のチェック

【参考】


(2)事故事例と分析

1)地山崩壊事故

 水道配管の掘削では,土被りを1.2mとすることが義務付けられていました(最近,0.6mまでの浅埋が認められましたが)。土留めが義務付けられる(もちろん地盤の状況を考えての加減は必要ですが)のは,掘削深さが1.5m以上の場合です。つまり,小口径管の場合は,通常は土留めを必要としませんから,準備も通常はしてありません。このため,

  • 地盤が軟弱
  • 降雨による軟化,風水害
  • 埋設深度が伏せ越しなどで部分的に深い
  • 予想外の埋設物がでてきてその除去を人力で行う
  • 掘削土を地山の近傍に仮置
  • ボックスカルバートや大型側溝などにより地盤が分離されている

 などの条件が重なったとき,地山の崩壊事故が発生することがあります。

 筆者も事故に偶然居合わせたことがありますが,このときの被害は土砂崩壊事故による半身埋没と,これによる骨折等でした。漏水修繕工事の際,配水管工事の埋設深さが通常よりも1m以上深かったことによるもので,配水管布設後に路面の改変が行われたことがその遠因でした。

2)漏水陥没事故

 漏水のケースにも左右されますが,水の勢いは非常に強いものです。理論的には,最低の水圧である1.5kgf/cm2(0.15MPa)でも,15mの高さまで吹き上がる力があることになります。

 ひとたび管に大穴があいたり,抜けたりすると,水の勢いは容易に道路を陥没させてしまいます。私の先輩には,供用開始前の配管と配水池の湛水試験の際,作業員の方のバルブ操作ミスによって弁室から噴水,あっというまに道路丸ごと流れてしまった経験をした人もおります。

  • 漏水・濁水・断水事故
     水道管の老朽化等に伴う事故事例。
  • 事故・人災(リンク切れ)
     道路陥没が主体の場合は事故のページに掲載。

事故以外の人災

 ここでは,事故に含まれない人災を扱います。まだ事例が十分にありませんのでひっくくって人災としましたが,一言でくくれるものではありません。今後の参考にしてください。

1)2000年問題

 水道界では,2000年問題に備えて,各県,各事業体での人員の配置,報告体制の用意,配水池への水の貯留などの対策をとり,統計上多少の誤作動が数件報告されたものの,会計や配水の支障となるような重篤な問題は生じなかったと報告されています。

 ただ,大晦日の日,北海道釧路市にて,需要集中による過負荷が原因と見られる断水が発生しました。大晦日は大掃除などで一年でも需要が集中する時期であり,また,当時の小渕首相が万一に備えて風呂水程度の貯留を呼びかけていたことなどから,特に帰省などで平時よりも需要水量が増える地方都市で,このような事態が発生する懸念は一部でささやかれておりました。ただ,これを言うことによって,貯留などの行動を助長する恐れが非常に強かったので,大きく呼びかけたりはされませんでした。私はこの事件は,水道における2000年問題被害の事例と考えています。

2)需要集中による過負荷

 通常,需要水量に対して過負荷が発生することは,日本の水道ではまずありません。多重の係数で余裕を見込んでいるためです。しかし,もしなにかの異変により需要が一気に発生すると,配水管網の能力はこれをカバーできません。このような場合,高台においては水の出が悪くなったり,水が出なくなったりします。需要集中による過負荷がポンプの停止をもたらすケースもあるようです。

 このような特殊な需要集中は,たとえば渇水による断水のお知らせなどの際に発生することがあります。実際にあったケースですが,夜9時から計画断水するとして広報したところ,需要者が午後7時ごろから一斉に水を溜め始めたために,7時30分ごろには一部地域で断水してしまいました。このため,後から水を溜めようとした需要者から苦情が殺到,この日の計画断水を急遽中止するはめになりました。

 また,洪水被害などのあとは復旧と掃除に大量の水が使用され,需要に供給が追いつかないケースがよくあります。「大雨の後に水がないってのはどういうこったい」などと言われると少し立場的に辛いものがあります...(-_-)ゞ

 先の2000年問題の件もこのようなケースの一例といえるでしょう。

3)電力危機

 水道施設の動力はそのほぼすベてを電力に頼っています。東京電力の最大の大口需要者は東京都水道局であるとの話を聞いたことがあります(裏はとってませんが)し,AWWARFの2001/10月のレポートによると,全米の電力の3%が水道によって消費され,これは全事業者で最も大きい割合であるとのことです。

 となると,電力が安定的に供給されないと水道施設の運用に支障をきたすことになります。

 米国カリフォルニア州では,制度設計の決定的破綻により,このような懸念が現実のものとなってしまいました。全州規模の計画停電の対象として水道事業を除外するような働きかけなど様々に手は打たれ,その後あまり報道されなくなっているようですが,今後については今のところ情報が入っていません。

 東京都水道局では,さまざまなシチュエーションにおける電力の安定的供給を図るため,常用の自家発電装置を設置する動きがあり,そのための事業方法としてPFIの手法が導入されています。



目次

事故
 水道で発生しうる事故について。工事事故,漏水事故,その他の事故など。

事故以外の人災
 事故に含まれない人災。いろいろバラエティがあります。


備考・出典

  • 事故事例は筆者にゆかりのある土地での記録が中心です。決して,ここに挙げた地方で事故が多いというわけではありませんので念のため。
  • 戦争・テロは分離しました。

更新履歴

  • 170831 災害発生件数の表更新。
  • 120905 新様式で作成。
  • 111114 建設労働災害防止協会:リンク先修正


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