水道技術経営情報
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監視制御における情報システム Communication System on Water System Control

 ここで,主として維持監視系における情報技術の適用について取り上げます。


情報技術の適用

 人手で行うことが不合理なために現在はほとんど行われていない分野に対して,IT技術を利用して一段高い維持管理体制を築いて行こうとする試みです。

1)遠隔画像等による侵入監視

 米国でのテロ事件以降,特に軍関連施設を持つ水道においてテロの攻撃を受ける可能性が認識されるようになっています。侵入検知のシステム事例としては,日本では鳥取県米子市の侵入検知システム(日立製作所)が最初に導入された事例だそうで,詳しい情報が水道産業新聞の010402で特集されていました。

 右の写真はイタリアアンコネラ浄水場(リンク切れ)の取水施設に設置された水源の侵入監視装置です。


2)遠方監視の改善

 施設情報を遠隔で手に入れるためにはテレメータを使用します。これらの工業用制御計算機は製鉄所や化学プラントなど,条件の変化や装置の故障がそのまま事故につながるような環境に耐えうるような仕様になっています。

 要求性能の一例を見ると,CPU処理能カ1M1PS程度以上,割り込み応答要求1ms以下,記億容量1MB以上,MTBF4,000時間以上,稼働率:99.9%以上,といったスペックが提案されています...ってわたしゃよくわかりませんが,要するに非常に高い信頼性が求められてきたわけですね。これを実現するため,計装機器及びそのソフトウェアには徹底的といえるほどリダンダンシーが与えられているわけです。

 パソコンやゲーム機などの廉価で高性能な機器は,このような高い信頼性を前提に設計されてはいません。単純なマシンスペックで比較すればほとんど変わらないとしても,単純に入れ替えて済むものではないようです。

 しかし,最近,IT技術の進展により,TCP/IPの活用など,WEB技術の適用も提案されるようになってきました。また,値段が3桁違う以上,パソコン管理でシステムをたとえば5重化したとしても,パソコンレベルの方がずっと安いわけです。要求仕様を明確にし,使用者の努力と技能が十分あれば,パソコンレベルでの対応で十分可能な場合もあろうかと思います。高いコストがネックになって監視制御が導入出来ていないケースなどでは,このような方法も十分選択肢に昇るでしょう。

 この他,三菱電機,千代田セキュリティサービス,山武,明電舎,日立製作所,東芝,荏原製作所,などのパンフを調べました。

 なお,信頼性の数値は[EICA環境システム計測制御学会誌]2000 vol.5 「水システムICAとインターネット」(大音透),に掲載されていたものを使用しました。


3)自動制御

 1990年代初頭に流行した知識工学やエキスパートシステムなど,コンピュータが知識データベースをもとに,与えられた条件に対する最適解を返すことで,制御を自動化する試みです。また,シミュレーションによる需要や薬注,経営,非常時対応などの最適化なども多々研究されています。いくつかの事業体で,監視設備とセットで導入された例があります。

 初期の自動制御は,すべてのシステムを自動化することを目指していました。しかし,現在では,特にエキセントリックなリスクについては人が対処する形とし,十分条件を満足するような補完的なシステムを目指すものとして進歩しつつあります。人間と機械の協調関係を巧く引き出し,さらに人間と機械のそれぞれがスムーズに情報をやりとりできるような工夫が,次に述べるヒューマンインターフェース,ということになります。


4)ヒューマンインターフェース

 「ヒューマンインターフェース」の概念とは以下のようなものです。備考欄の高田さんよりご案内いただいた定義を,若干かみ砕いてみました。

 ヒューマンインタフェースとは、人とシステム(機械、コンピュータ、建築物など),あるいは人と人のインタラクション(=相互の関係,ひらたく言えばつきあい方)を円滑かつ快適にすることを目的とした考え方です。つまり,システムは,機能の提供にとどまらず,操作者,管理者がどのような情報を好んで受け取るか,どのような表示であれば気づきやすいかなど,人の感じ方,受け止め方の特性までを考慮して設計されなければならない,そのことを示す概念を表すものです。このような人にシステムが構築することで,ヒューマンエラーを抑制すること,が,この考え方の目指すところです。

 備考の論文では,浄水場における維持管理の実態を調査し,その結果として,

  1. 故障の発見は監視装置の警報によっている
  2. 故障に対する処置はマニュアルよりも他人の意見を重視する
  3. 主に計器が示す値を信じて運転を行っている。

 との結果が得られ,これはごく一般的な認識であるとされています。ただし,このとき,例えば「計器が故障していたら?」あるいは「異常表示を見過ごしていたら?」...このような異常によって,検知されるべき異常が見過ごされたり,逆に異常がないのに異常と判断してしまう可能性があります。また,表示方法について,論文では,制御量の表示を,「数値」,「グラフ」,「数値+グラフ」の3種類として比較実験を実施,「数値+グラフ」の操作が最もよい成績を残したことを証明されています。

 情報は,「情報があること」そのものよりも,「適切なときに適切な情報に触れられること」の方が大切である,との警句は「コンサルタントの秘密」では,「Main Maxim=本管の金言」として紹介されていました。また,異常検知時に警報音が鳴るシステムを導入したところ,あまりに頻繁に警報音が鳴るのでスイッチを切ってしまい,実際の異常時に役に立たなかった,と言う風に,表示方法が適切でなければ意図した成果が得られないケースもままあるようです。

 この分野に関する,もう少しつっこんだ情報や,ご意見など,是非投稿くださいませ。m(_ _)m

【備考】



目次

情報技術の適用
 水道における情報技術の適用について。


備考・出典

  • この分野については,私は決して詳しいわけではありません。が,これからのこの分野の役割を強く指摘するご意見をいただいたので,その意見に賛同し,関連の情報を若干集めたものです。さらに詳しいつっこみを期待しております。 
  • 浄水場におけるマルチメディアシステムの役割 高田 勝己 日本水道協会関西支部第45回研究発表会 

更新履歴

  • 170614 リンク先変更。
  • 120904 新様式で作成。


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