配水管路の選定や設計に関する事項を整理するための場所です。
【参考】
管種の選定
(1)水道用配管材料一覧
水道で使用する管材料の選定はアタマの痛いところ。極論すれば,どのような管材でも,水道用として十分な性能をもっています。水道協会による認証を受けていることがこれを端的に説明していると思います。
そうはいっても,さまざまな状況への対応を考えると,得意な管,苦手な管が生じるのはいたし方ありませんし,むしろさまざまなシチュエーションへの対応能力が異なるためにいろんな管種があるわけです。
水道で使用される(可能性のある)配水管,給水管の種類のうち代表的なものを一覧します。
種類 |
管種類(Lはライニングの意) |
略記 |
使用 |
継手形式 |
鋳鉄管 |
普通鋳鉄管 |
CIP |
×老朽化,交換中。 |
押輪A形,カラー,印籠継手。 |
ダクタイル鋳鉄管(モルタルライニング) |
DCIP,DCP,DIP,DP |
○直管専用。 |
押輪接合K形(標準押輪形)S形,SU形,NS形(耐震形),ゴム輪押込接合(T形)。 |
ダクタイル鋳鉄管(エポキシ粉体ライニング) |
○広く普及。 |
ダクタイル鋳鉄管(タールエポキシライニング) |
×水道用は不適当。 |
鋼管 |
塩ビライニング鋼管 |
SS,SGP,SGWP |
○広く普及。 |
溶接,フランジ接合,リング(ビク)ジョイント,ネジ切接合。 |
ポリエチレンライニング鋼管 |
○広く普及。 |
ステンレス管 |
SUS |
○増加中。 |
複合管 |
鋼帯がい装ポリエチレン管 |
WEET(商品) |
○特殊な能力有。 |
ソケット接合。 |
硬質プラスチック管 |
硬質塩化ビニル管 |
VP |
○広く普及。 |
プレーンエンドTSソケット継手,RR(ゴム輪)形継手。 |
耐衝撃性硬質塩化ビニル管 |
HIVP |
○広く普及。 |
軟質プラスチック管 |
ポリエチレン管 |
PE,PEP |
○広く普及。 |
ソケット接合,EF(電気溶接)接合。 |
架橋ポリエチレン管 |
XEP |
○増加中。 |
ポリブテン管 |
PBP |
○特殊な能力有。 |
コンクリート管 |
ヒューム管 |
HP |
×水道用は不適当。 |
カラー継手,ゴム輪接合。 |
石綿セメント管 |
ACP |
×老朽化,交換中。 |
ここでは,どのようなシチュエーションの時にどのような管種が優れるかについてまとめます。
【備考】 この項目,メーカーさんの利害に絡むので,なかなか取り扱いが難しいのです。なるべく中立的な立場から取りまとめますが,ご異議などについてはどしどしお寄せくださいませ。基本的には削除することはしませんが反対意見も必ず加筆します。
(2)耐震性,軟弱地盤への対応
軟弱地盤地帯においてはその影響,例えば道路の衝撃荷重や不同沈下の問題についてより重点的な配慮が必要になります。各種管種の地盤変位への適応性について総括します。
種類 |
略記 |
鋳鉄管 |
ダクタイル鋳鉄管の接合方法,メカニカル継手には可とう性があるので,鎖状の構造になります。地盤の変位や応力への対応はこの可とう性により吸収します。管の剛性が高く,発生する被害は抜けが中心です。 |
鋼管 |
大規模は鋼管は溶接により一体型の構造になります。また,鋼材自体には展性がありますので,少々の変位は一体である管構造が吸収します。発生する被害は破壊が中心です。 |
複合管 |
管自体に大きな展性がありますので,地盤の変位や応力を吸収できます。プラスチック管に比べると管自体の強度が高いため,継手が外れない限り地盤による影響は受けにくいでしょう。 |
硬質プラスチック管 |
一体型の構造による場合(TS継手)と鎖状の構造による場合(RR継手)の双方が用意されています。管の剛性が鉄製のものよりも弱いのはいた仕方ないところでしょう。 |
軟質プラスチック管 |
管自体に大きな展性がありますので,地盤の変位や応力を吸収できます。管自体の強度は高くありません。配管時に少し余裕を持たせる(たるませ気味にする)ようにしましょう。 |
コンクリート管 |
抜けや破壊に対して他の管種より脆弱です。水圧のかかる水道用での使用は推奨できません。 |
【備考】
(3)未整理
いろいろありますが,項目が多いのでなかなか全部の作業を一気にやるわけにはなかなかいきません。以下のような点については順次整理していきます。
適用口径にも違いがあります。鋳鉄製の管は大口径用,プラスチック管は小口径用,鋼管は別規格で双方があります。
価格ですが,プラスチック管は安くて軽く,施工も容易です。鉄製の管はどうしても重くなります。ただ,樹脂管は溶剤に弱いのが弱点になることがあります。まさか,と思われるかもしれませんが,実際に溶剤を大量のこぼされ,管が破損した事件があったそうで,最近の浸透性舗装や浅埋を考えると,リスクは増大しているはずです。
地方公営企業法施行規則によると,耐用年数は鋳鉄管で40年,その他の管で25年となっています。
規格の異なる別種類の管の接合にはさまざまな継ぎ手が製作販売されています。
非常時の技術支援や資材の融通などの視点から,近隣市町での配管方法はなるべく統一しておくことが望ましい場合があります。兵庫県南部地震災害の復旧の際に,全国から応援部隊が持寄った資材がなかなか使用できなかった経験から,クローズアップされています。
電食は特に鋼管の弱点です。というのも,他の管と比べて一体構造で電気を通しやすいためです。鋳鉄管の場合は,ジョイントの部分で絶縁されるため,電飾被害は鋼管よりも小さいようです。
モルタルライニング管といえば鋳鉄管が有名ですが,水道用モルタルライニング鋼管が日本水道鋼管協会規格として、また、上水用モルタルライニング鋼管が日本工業用水道規格として規定されています。これらによると、「水道用塗装鋼管または配管用アーク溶接炭素鋼鋼管に錆止めもためモルタルライニングを施したもの」と規定されています。国内では、沖縄等米軍基地関連を除き、殆ど使用実績はありません。(米国の規格では内外面のモルタルライニングや鉄筋を施したコンクリートパイプ等の規格もあるようです)。 ●参考文献−日本工業用水道規格第2号,日本水道鋼管協会規格WSP001−73− ●情報提供および執筆=つっちー氏
●硬質塩化ビニル管 耐食性,耐電性大。直射日光による劣化,温度変化による展性の変化。難燃だが熱や衝撃には比較的脆弱で,特に有機溶剤の影響を受けやすい。
●架橋ポリエチレン管 耐熱,耐寒,耐食に優れる。軽量で柔軟なれど,軟性プラスチック管の共通の問題,膨張破壊の可能性がある。
●ポリブテン管 耐高温環境用。高温時の強度低下がなく,腐食もない。軟性プラスチック管の共通の問題,膨張破裂の危険がある。
●銅管 耐アルカリ,スケールが発生しにくい。肉薄で軽量なれどその分圧壊の危険がある。腐食のリスクは比較的高い。
●鋼製・ステンレス材料と塗装
130218追記、鉄は錆びるので塗装でこれを防ぐ。塗装技術は鉄の錆を防ぐために非常に発達しているが、一方で溶接部等、塗装ができない場所があるとそこが確実に弱点となる(そこだけステンレスにしたりすることもある)。水管橋の露出部塗装は3年に一度程度は必ず塗り直すこと。塗装はステンレスは錆ないことが売りなので塗装をしないことが多いが、バクテリアの生育に適した条件の場合、塗装をしていないことが仇となってマイクロセルによる電食が発生する場合もある。ステンレスの設備が短時間に破損したらこれを疑ってみるのも手である。
【備考】
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