水道技術経営情報
 コンサルタントの水道技術経営パートナーズが運営する、水道技術や経営の情報サイト「狸の水呑場」へようこそ。お問い合わせはこちらへ。
Powered byGoogle

水撃現象 Water Hammer

 水撃圧の現象論と対策についてのページです。

【参考】


水撃現象 Water Hammer

1)水撃現象の概要

(1)水撃圧とは

 水撃圧(ウォーターハンマー)とは,有圧の導・送・配水管などの施設において供給される水の流れが急に阻害される場合に,その運動エネルギーによって管路や設備などへの圧力が急変し,衝撃をもたらす作用のことです。わかりやすくいうと,「勢いのついた水を急に止めたりしたときに,水圧が急激に変化する現象」のことです。

 管網であれば,水圧の上昇分が拡散的に影響したり,相互にサージング効果が働いたりするので,あまり大きな問題を生じないのが普通です。水撃圧の問題に注意しなければならないのは,単管路で延長が長く,ポンプや弁など圧力の変化を発生する設備を設けている場合で,揚程が大きいなど圧力差の大きい場合です。つまり,送水施設のほとんどがこの条件にあてはまります。

 水撃圧が発生するケースには,水と水がぶつかって水圧が急激に上がる場合と,水と水が離れて水圧が急激に下がる場合があります。一見すると,圧力が上昇する場合のほうが危険な気がしますが,実は逆なんですね。それぞれに発生する現象をまとめてみます。

(2)正の水撃現象−水と水がぶつかって水圧が急激に上がる場合

 揚水時(送水側)などに水圧が異常に高くなることにより設備に悪影響を与える場合です。バルブの急激な閉止などによって発生する(んだったんだっけ...忘れた)

 計算するのがめんどくさかったら,ポンプ部で揚程の2倍の水圧がかかった場合の計算をしておけば大体正解なようです。管材などの耐圧は,仕様の倍の圧力に耐えることを基本として計算していますので,正の水撃現象が問題になることはあまりないようです。

(3)負の水撃減少−水と水が離れて水圧が急激に下がる場合

 長いパイプを通じてポンプで水をくみ上げている場合などで発生する惧れがあります。

 ポンプによって,水は運動エネルギーを与えられ,パイプの中を「勢いよく移動」します。ここで,突然,ポンプが全く停止したとしましょう。すると,「先に勢いよく移動していた水」はそのままパイプの中を移動するのに対し,ポンプ付近の水には「勢い」が急に与えられなくなります。この,「勢いのある水」と,「勢いのない水」の間に,水圧の低い部分が発生します。つまり。「水と水が離れて水圧が急激に下がり」ます。

 このとき,管の中の比較的高い位置などで水圧が水の蒸気圧を下回ったとき,すなわち約10mkgf/cm2=0.98MPaを下回ったとき,水は液体でいられなくなり,パイプの途中で真空に近い水蒸気(等)のカタマリが発生,液体の水が分断されます。この現象を「水柱分離」といいます。

 このような状態は,「勢いよく移動していた水」が摩擦や位置エネルギーの獲得などによって「勢い」を失うまでの極短い間に発生します。ですから,すぐに「水柱」は互いにぶつかり合ってもとの連続した液体にもどるのですが,これらがぶつかり合うとき,通常ではありえないような大きな衝撃が発生し,管体などを破壊するのです。

 通常,水撃対策では,この衝撃がどの程度になるのかを計算することはしません。負圧を生じないようにするための対策を考えます。目安として,約10mkgf/cm2=0.98MPaに安全率を見込んでその80%程度,水頭で言って−8m以下の水圧にならないようにする対策をとることになります。

(4)水撃圧について懸念すべき地形

 水撃圧の検討計算をしたことがあればわかりますが,水撃圧の問題は,それが発生しやすい地形というものに大きく左右されます。水撃圧の問題が発生しやすい地形,発生しにくい地形について,以下に簡単に示します。

 右図は,水撃圧について考慮しなければならないようなケースの一般的な模式図で,左のポンプを用いて右のタンクに水を送るものと考えてください。ポンプによって水に与えられた運動エネルギーは,途中の管路で摩擦によるロスを生じながら,最終的にはタンクに到達します。

 1〜3は地形と考えてください。1は,ポンプ付近でなだらかだった地形がタンク付近で上がるようなケースです。このようなケースは,比較的水撃圧は発生しにくくなります。

 対して,2のように,直ぐに高さが上がってその後なだらかになるようなケース,3のように,途中で峠越えのようなことをしなければならないケースでは,いずれも水撃圧の問題の影響を受けやすくなります。これは,ポンプに近い位置で標高が高くなると水柱分離が発生しやすくなるためです。詳しい計算過程は避けますが,実際に水圧線を引いてみると,どういうことが起こるのかよくわかるはずです。

 ちなみに,2のようなケースではフライホイールなど流量の激変緩和措置が有効です。また,3のようなケースでは,サージタンク等の利用が有効です。

【備考】


2)水撃圧対策

 さて,水撃圧を防止するための方法ですが,水の勢いが「急激に」変化しないようにすることがもっとも現実的な対策です。一般的な対応策には以下のようなものがあります。

(1)フライホイール

 ポンプ圧送時にポンプの急停止を防止するため,ポンプの回転軸に錘を設け,その慣性を利用する方法で,もっとも容易で確実な対策として広く採用されます。基本的には据え置き式のポンプに設ける装備ですが,井戸用の水中ポンプにもフライホイールをつけられるものがあるようです。フライホイールの性能(慣性力)を表すSD2は,ポンプ本体の分とあわせてポンプ屋さんに聞くのが一番間違いないです。

 水撃圧,ウォーターハンマーについては「水道設計指針」などにも計算事例が掲載されており,この計算の場合はフライホイールによる対策が前提になっています。もっとも,あまり難しい計算事例は掲載されていません。筆者も計算した経験はありますが,もっとも重要なポンプの特性曲線を入手する関係上,かなり詳しいポンプの仕様が必要です。

 このあたり,もっとも詳しいのはポンプ屋さんです。実際に何らかの装置の設置考えているのであれば,ポンプやさんに相談されてはいかがでしょうか。(逃げ...)

  • ポンプ
     ポンプの一般論とポンプ屋さんのサイトへのリンク。

(2)コンベンショナルサージタンク

 管内の負圧の発生しやすい高所に自由水面をもつタンクを設け,その水面の上下道で水圧を逃がす方法です。コンベンショナル,つまり,最も基本的なサージタンクの形式です。水圧の変化を位置エネルギーの変化として吸収することができます。

  • コンベンショナルサージタンクの例

 写真ではつたがからんでいてわかりにくいのですが,水色に塗装された煙突のようなやつがサージタンクです。

 コンベンショナルサージタンクは効果がもっとも確実なので,事故が発生した場合の影響が大きい大口径送水管路などで,比較的古い施設において採用されるケースが多いようです。ただし,なにしろ自由水面を設けるわけですから,水理計算などにより最大水位を把握したうえで,これより高い塔が必要なわけで,どうしても費用がかかり,その位置の自由度もほとんどありませんから,どこでも設置するというわけにはいきません。

(3)ワンウェイサージタンク

 急制動を水の供給により抑制する方法の一種で,発生するであろう水柱分離の容積分の水を,負圧時に供給してやろうというのがそのコンセプトです。地形の急変する地点で,かつ水柱分離が大きくなる地点(急斜面から緩斜面に移行する地点など)に設けるのが効果的なようです。

(4)圧力タンク

 急制動を水の供給により抑制する方法の一種です。比較的小規模なポンプに利用されます。圧力を与えて送り出す設備を設けることで,ポンプ付近に設置することができるようになります。通常の圧送と機能を兼ねることができるのがメリットです。設備が複雑になる場合が多く,冬季の凍結防止について,屋内に設置するなどの配慮をしましょう。

(5)空気弁

 空気弁は高所に必ず設けますが,空気の吸い込みにより圧力を逃がす効果があります。ワンウェイサージタンクが水の供給によって負圧を回避するのに対し,空気弁は空気の供給によって負圧を回避するわけです。実際的な効果は十分であることが多く,また安価ですが,空気弁の能力には限界があり,比較的故障しやすいため,過信は禁物だと聞いています。少なくとも,空気弁を設けているから大丈夫,という対策をとるのであれば,それなりに空気弁の維持管理をしっかりやっておく必要があり,そのために必要となるコストは決して他の手段と比較して安価とは言えないでしょう。

(6)制動弁

 急閉弁,緩閉弁などを状況に合わせて選択します。なお,このバリエーションになるのですが。充水バタフライ弁という,副弁機能を持たせたバタフライ弁が,緩閉弁と同じ効果を有するとして注目されているとのこと。詳しくはクボタさんのサイトにて。

【参考】
 ずいぶん以前に作成したメモより加筆修正。



目次

水撃現象
 水撃現象の概要と対策について。


備考・出典

 7/2工事開始。7/8とりあえずとりまとめ...実際の計算手順などもいずれ。(っていつ?)


更新履歴

  • 120817 新様式で作成。
  • 111028 クボタバルブ、リンク先変更。


WaterPartnersJP all rights reserved >>index >Top