水道技術経営情報
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経営診断と経営方針 Foundation Planning

 ここでは計画論としての経営方針について整理します。でも,基本計画との位置関係から説明していく必要があるのが,ある意味最大の課題かもしれませんね...

【参考】


経営方針

1)経営方針策定の意義

 水道における一般的な基本計画については別のページに掲載していますが,水道で基本計画というと,下図の下側のフローで示すように,需要予測>施設計画>財政計画,のフローで作成するのが普通でした。つまり,必要な大きさを決めて,必要な施設を決めて,必要な費用を決める。お金がたりないときは料金アップで回収をはかるわけです。実は認可申請書の掲載順序もこうなっています。

 でも,これは,要するに,拡張の時代のロジックなわけであります。

 これからのほとんどの水道経営では,まず現在の経営状況を診断したうえで,投資可能な範囲を探り,そのうえで,供給条件の方をきめていかなければなりません。現代において,料金アップを前提とした拡張計画は許容されにくいケースが多いことなどを考えると,場合によっては区域拡張をあきらめるようなことも必要になるでしょう。

 このように,今後の基本計画では,需要予測の前にまず経営診断を中心とした情勢分析(需要予測もここに含まれる)を行い,その結果を技術的かつ経営的に検討して,いかにして水道事業の経営を持続するか,にフォーカスすべきと考えます。

2)経営方針の策定にあたって検討すべき項目

 経営方針を検討するためには,まず最初に事業の情勢を把握する必要があることは前述したとおりです特に重要なチェックポイントとしては以下のようなものが考えられますが,現状ではここまで視野に入れた計画策定は稀です。

社会動向の予想 当面5年程度先までにおいて導入される見込みのある社会的規制やニーズなどについてはある程度織り込んでおくことが必要でしょう。環境負荷低減策や水道安全計画などは当然視野に入れるべきです。
需要分析(予測) 需要水量は経営における料金収入に決定的な影響を与えます。区域の拡張ニーズへの対応も必要ですただし,拡張の時代とは異なり,水源の確保は水道の根源を揺るがす問題になるかどうかよく検証する必要があります。
財務分析 財政的な裏づけを考慮した持続可能な水道事業の経営について考える場合、事業の条件や設備投資などを価値評価したうえで、条件の変化が経営に与える影響を調べる、いわゆるシミュレーションを実施することが有効です。
投資計画 財務分析の結果を受け,どのような用途にどのような資金を投下するか,その戦略を用意します。もし不可避的な拡張事業が必要な場合は,投資計画はより上位にきます。
水源と浄水方法 水源および浄水処理の組み合わせによる水資源のポートフォリオを,平時,危機時の双方を視野に入れて最適化する必要があります。
機能診断 現有の施設の機能をチェックし,今後どの程度の期間運営を継続できるのかについて概略を把握します。耐震診断もこの一部です。機能診断についてはさまざまな手法が提案されています。
組織分析 職員の確保,教育,連携,さらには職員の配置や組織効率化等を視野に入れた作業分析などまでを行う場合もあります。一般化が難しい部分のうえ,属人的なところが大きくなかなか大上段に取り組みにくい分野ではありますが,ある程度以上の規模を有する事業ではこのような取り組みも自然発生的に拡大しています。
情報戦略 主として情報の収集と整理です。特に,これまでの事業の経緯についての情報は,しっかり整備しておかないと容易に失われ,いざ改良をしようとしたときに困ることになります。設備台帳やマッピングシステムのように,情報の整備を助けるシステムも各種開発販売されています。
外交戦略 他事業体との協力体制や非常時応援,合併を視野にいれた戦略の検討など。あるいは,民間企業やNPOなどとどのような形で連携を図るか,その基本戦略などを用意しておく必要があります。
災害分析(予測) 水道事業に対する脅威を分析し,これに備える方法を用意します。現在のところ,役所目線で地震対策が中心となっていますが,どのような災害が一番インパクトが大きいのかについては,インパクトアナリシスなどの方法でより緻密に検討しておくことが望ましいです。

【参考】


経営診断

1)企業会計に基づいているかどうかの確認

 一般的な水道事業は地方公営企業法に則って経営されており、企業会計基準に基づいた信頼に足る財務データがありますので、経営診断は比較的取組み安いといえるでしょう。ただし、簡易水道ではこのような複式会計のデータがないことがあるので、一気に経営診断はやりにくくなります。

 なお、企業会計にのっとっていない事業を企業会計に則った経営に切り替える作業を「法適化」といいます。

 近年、下水道とかでアセットマネジメントの必要性が指摘されることが多いのですが、企業会計に基づいた経営さえされてれば、必要最低限のアセットマネジメントは成立しているわけです。このため、水道で言うアセットマネジメントはもう少し高度なものになります。余談ですが。


2)経営診断指標の要目

 経営は、経営の現状を把握し、将来にわたって経営を継続できるかどうかを、企業会計上の情報からチェックすることが中心です。いわゆる管理会計による、経営の健全性の把握です。

 公営事業の場合、通常の私企業のような競争がなく、利潤の最大化を目的としていないため、経営診断の目的は「水供給の継続性の確保」に重きが置かれることになります。また、経営診断で見るべきポイントも、一般の私企業とは大きく異なってきます。

 水道を含む地方公営企業の経営診断の指標については、地方公営企業年鑑が充実しており、これらの指標はそもそも「地方公営企業の経営分析に関する研究」(昭和54年3月、地方自治協会)にて整理されたものがスタートとなっているそうですが、時代の変化に基づいて断続的に見直されており、最近では、経済性の視点などがより強化されてきているとのことです。

 大枠としてのチェック項目はおおよそ以下のようになっていますが、これは資料によってまちまちです。

  • 収益性・経済性(資金から見た効率)・施設効率(施設で見た効率)
  • 安定性・健全性・流動性
  • 生産性(人で見た効率)

【参考】
 お金面でのチェックはこんなところですが、お金以外のチェックも重要。この辺もあわせて経営診断を行うことになります。後日追記予定。



目次

経営方針
 経営診断を受けての方針設定の方法と実践を示します。

経営診断
 水道事業の経営状況を把握するための方策について。


備考・出典


更新履歴

  • 120813 新様式で作成。


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