水道技術経営情報
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水道事業の統合 Integration

 水道事業の統合について。平成13年度の水道法改正により,施設統合を伴わない事業統合も可能になりました。規模の拡大による効率化を図るためにも,今後の計画立案時に考慮すべき重要性が増大することが見込まれるでしょう。

  • 広域化
     水道と広域化について。このページともかなりかぶりますが。

【参考】


水道事業の統合

(1)水道の統合に関する制度

 水道の効率化の一手法として,規模のメリットを追求できる広域化があり,行政的にも積極推進されています。法的にも,平成13年度の水道法改正で「施設連絡を伴わない事業の一体化」が可能になったほか,簡易水道事業の統合についてはそのための補助制度があります。

【備考】


(2)市長村合併に伴う事業統合

1)合併関連制度

 市町村合併に伴い水道事業の統合が必要になる場合があります。市町村が複数の上水道事業を運営すること自体には問題はありませんので,当面市町村の合併を優先して,水道事業の合併を後回しにすることも有力な選択肢です(南アルプス市など)が,このような場合でも将来的には水道事業も合併を想定していくべきでしょう。

 市町村の合併を行う場合,水道料金のように,市町村のサービス水準に関する調整は,合併協議会を設立してここで調整することとなります(そうしないと特例措置が受けられない)。詳しい制度などについては,市町村統合の窓口に掲載された情報が参考になると思います。

  • 【合併相談コーナー】(リンク切れ)
     総務省による市町村合併の説明コーナー。

2)厚生労働省の指導

 市町村合併に伴う水道の対応については,日本水道新聞3030303に,2月13日付事務連絡,2月17日付の全国水道担当者会議で厚生労働省の基本姿勢が報道されています。大まかな内容は以下のとおり。

  • 市町村合併と併せて速やかに水道事業の統合(経営のみの統合を含む)を行うことが望ましい。
  • 市町村合併に併せて新規水道事業認可を受ける方法と、事業の全部譲り受ける行う方法の二種で,地域の実情等に応じて選択。
  • 市町村の合併時期と形態,水道事業統合の形態などは,可及的速やかに報告する。平成16年度は年前半までに認可を申請しなければならない(未確認)。

 市町村台併に併せて新規水道事業認司を受ける方法は主に水道法第六条に基づくもの。合併に係る市町村が経営する水道事業体が

1 合併前に規定(法十一条)に基づき廃止される自治体側の事業が廃止許可を得る。

2 新自治体の水道事業では以下のような認可申請書を作成提出する。

  • 事業計画書
    • 給水区域
    • 給水人口および給水量(合併前の単純計でよい)とその算出根拠
    • 給水人口および給水量の算出根拠▽
    • 工事費の算出根拠
    • 借入金の償還方法
  • 添付資料
    • 主要な水利計算
    • 構造計算
    • 工事設計書

3 水道用水供給事業の場合,給水対象である水道事業者とそうでない水道事業者の合併は給水対象の増加には該当しない。よって変更認司の必要はない。

 以上ですが,正確を期す必要がある場合は以下のサイトでご確認を。

4)合併の類型

 市町村が合併する際の水道事業の統合は,大きくわけて以下の4種の類型が考えられます。

  • 大規模事業への統合。基本的には譲り受け認可となります。
  • 新事業の創設。基本的には事業創設認可となります。
  • 複数事業の統合。全部統合でない場合,統合しな部分がなぜ統合されないままなのか,合理的な理由が必要でしょう。
  • 当面統合しない。書類は変更届の提出のみでよい。ただし,次回認可時までには統合の道筋程度は必要でしょう。

5)料金格差の是正

 水道事業体の統合にあたって最も大きな障害は通常は料金体系の違いです。逆説的な話ですが,広域水道で複数の市町村に末端供給している場合などはもともと地域同士の結びつきが強く,合併もスムーズに進んでいるようです(さいたま市,つくば市など)。料金体系の違いをどのように取り扱うべきかについて検討してみます。

 一般に,自治体同士の統合などは,サービスレベルが異なる場合,負担は少ない方,サービスは充実している方に併せることにより統合への障害を取り除くのが普通です。これは,合併のように特殊な負担を伴う事業をスムーズに進めるためにやむを得ないところがあるのですが,このやり方を踏襲すれば,水道料金も低い方に合わせることになりがちです。(下項目の1に相当。)この場合,独立採算を前提とする水道では,いくら規模のメリットが出るとはいえ,すぐに収入欠損が表面化します。

 料金格差の解消については,

  1. 当初安い方の料金で経営統合し,収入不足が表面化した段階で値上げする方法。一時凌ぎにしかならない可能性が高いでしょう。
  2. 別の水道事業としてそのまま運営する方法。簡易水道と上水道など,別事業とする明確な理由がある場合で適用される場合があります。私が以前取材した例では,隣接する市と町が合併するケースで,市が上水道としての料金を継続し,町側が簡易水道としての料金体系で運用を続けるとのことでした。
  3. 段階的に施設統合を図り,その過程で名実ともに一体化する方法。料金格差が小さい,広域水源(広域水道など)がある,など外的要因があるとこの方法が使いやすいです。
  4. 合併時に資産の精査を行い,累積償還残を一掃する方法。将来への遺恨を解消する抜本的統合策といえるが,料金格差の原因が何なのかを明かにするためには資産精査や各種検討が必要。一般会計からの資金投入など,資本投入の必要性が考えられる。

 などが想定できると思いますが,制度上の問題なのでどれがよいかは事業体の事情を勘案しないと一概には言えません。基本計画の一テーマとして,その能力を有するコンサルなどに相談なさるとよいかと思います。

 市町村合併による水道料金の統一の実態については詳細に調査された事例がありますのでご参考ください。

6)市町村合併時の手続き

 認可手続きをどのようにするかについての流れを簡単にまとめると以下のようになります。具体的に提出する書類の様式などについてはなにぶんにも社業で収集作成しましたので私の一存では掲載できません(^o^)ゞ

  • 変更認可の要件に該当する場合は変更認可となる。(区域,水量が拡張する,水源等が変更になる等)
  • 変更認可の要件に達しない場合は,新規事業認可とするか,事業の譲り受け規定を利用するか,いずれかの方法をとる。
    • 合併前に,新規事業認可を受けることにより事業統合を行う場合,簡易な認可申請書を作成する。
    • 事業の譲り受けの規定を利用する場合,事業の全部譲り受けの届出,記載事項変更届を提出する。
  • 水道事業を合併しない場合は,記載事項変更届を提出する。

【備考】


(3)上下水道経営統合

 上下水道の所掌部署が一体化して上下水道局等を設立する例がここのところ目立っていますが,その理由はなんなのでしょうか。この件について問い合わせをいただいたのをきっかけに少し調べてみました。

 まず,上下水道部署の統合のメリットについて整理すると,以下のようになります。

  • 管理業務の集中化による人員・経費の削減
     部署を統合することで,総務,経理,技術など,重複する分野について一元化することができ,人件費の削減を図れます。また,管理システムの導入時などにメリットがあります。事業管理者級のポストの削減などでは実例があるようです。
  • 土木・管工事の技術職員の集中化による業務の効率化
     配管・管渠工事を中心に,上下水道一体施工と管理を行うことで,工事の重複や連絡の不徹底を防止することができます。また,工事指定業者の一元的指導監督や,道路管理者などとの交渉一元化などについてもメリットが期待できます。道路工事の一括施工についてはこのほど(H15/4)一括して行うべきとする施策が動き始めたこともありますので,この流れにも合致しているといえるでしょう。
  • 上下水道サービス窓口の一本化
     料金徴収や水廻りの問い合わせ,緊急工事などの窓口を一本化することにより,住民サービスの向上に資することができます。
  • 上下水道事業の効率化
     技術開発や計画の共有化により新たな技術的進展が得られる可能性があります。たとえば,浄水汚泥の下水処分,上水取水地点と下水放流先の調整などが考えられます。これらは,しかし,うまくいくかどうかの問題も抱えていまして,そのままデメリットとなりうる懸念事項でもあるようです。
  • 技術的交流
     海外の水道事業では上下水道(さらに水資源環境まで)を一体で取り扱っている場合が多く,国際交流や意見交換の視点からも上下水道一体での事業推進が望ましいものと考えられます。また,名古屋市のように,将来的な流域管理をにらんでいる例もあるようです。

 これらメリットに比較すると,積極的なデメリットはあまりありません。統合途中の作業がいろいろ面倒くさく,その分でメリットを相殺してしまう場合がある,という程度しか指摘できません。

  • 部署組み替えにかかるコスト
     現在の体制が分離であるなら,これを一つの組織にするための負担は決して無視できるものではなく,その犠牲を払ってまで一つの部署とする必要はないのではない場合も多いようです。

  • 技術的,コスト的なアプローチ手法の違い
     これは多分に日本的なものかもしれませんが,厚生労働省所管の上水道事業が独立採算の公営企業としての性格が強いのに対し,国土交通省所管の下水道事業が社会福祉のための公共事業としての性格を強く打ち出しているため,技術的には関連性のあるはずの上下水道事業の間に,特にコスト感覚の点において相違が見られます。この一種の「すれ違い」は,そのまま技術的アプローチの違いに投影されており,自発的な統合が進まない原因にもなっているように思います。

 ただ,上下水道の統合のもう一つの背景として,下水道事業への企業会計導入の動きがあることについては触れなければならないでしょう。上水道事業は企業会計が原則なので,下水道の会計手法を変更する作業にあたって,上水道の経験豊かな職員を使うことが考えられ,この際に合わせて上下水道部局の統合をしてしまうことには合理性があると思います。もしかしたら,このような理由によって,今後,上水道,下水道部局の統合が進むのかもしれません。

【備考】



目次

水道事業の統合
 水道事業の統合にあたっての確認事項等について。


備考・出典


更新履歴

  • 120810 新様式で作成。


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