水道ビジョン |
Water Supply Vision |
水道に関連する政策目標等から水道ビジョン関連を抽出しました。
- 水道行政全般
計画年度が迫っていたり,廃止された施策について。
地域水道ビジョン
平成17年7月に就任された厚労省の山村水道課長は,各水道事業がそれぞれ自ら水道事業体としての方向性等を整理提唱することが重要だとし,この概念について「地域水道ビジョン」という言葉を用いて解説されました。
環境分野でのローカルアジェンダ21を好例として,いわゆる,「Think globally act
locally」の水道版を実施すべきとのこと。課題を洗い出して数値を示し,目標を明確化する手法は特に今日求められる社会的要求でもありますので,企画経営計画に係わる場合はこの視点が重要でしょう。
この流れを受けて,051017には「地域水道ビジョン作成手引き」とこれに関する事務連絡が公布され,地域水道ビジョンで策定すべき項目等が公開されました。
基本的に,地域水道ビジョンにて検討すべき内容は基本計画に近いので,基本計画のない事業体さんの場合は,あわせて検討するのが理想的です。
ただ,大切なのは,自らの水道事業の中長期的な目標をもっておくこと。本格的な基本計画の策定には相応のコストがかかるのはしかたがないのですが,そのようなコストが捻出できない場合でも,せめて,事業体内部でそのような勉強会的な取り組みをやるべきです。それによって長期的な課題などについての認識を共有することが持続可能な事業経営の第一歩であり,地域水道ビジョンの趣旨でもあるのですから。余談ですが,仙台での2008年の研究発表会ではそのような取り組みの例(愛知県の丹羽広域事務組合)が発表され,個人的にはいたく感動した次第です。
現在では多くの水道事業体が地域水道ビジョンの策定を行っています。中小規模事業体の例として早期に実施された例をひとつ紹介。
- 長泉町水道事業基本計画 概要版 2004(リンク切れ)@【静岡県長泉町】
地域水道ビジョンの実施状況のリストにはありませんが,このようにして計画を作るわけです。
水道ビジョン
「水道ビジョン」とは,水道の所掌官庁たる厚労省が,水道の目指すべき方向性について示したもので,平成16年6月付けで正式に公布されました。
その目的は,「我が国の水道の現状と将来見通しを分析・評価し、水道のあるべき将来像について、すべての水道関係者が共通目標を持って、その実現のための具体的な施策や工程を包括的に示す」ものとのことです。(厚労省水道課HPより引用)
水道ビジョンの長期的な政策目標は以下の5点で,この視点に基づいて様々な問題とその対応の方向性がまとめられています。
- 安心:全ての国民が安心して美味しく飲める水道水の供給
- 安定:いつでもどこでも安定的に生活用水を確保
- 持続:地域特性にあった運営基盤の強化,水道文化・技術の継承と発展,需要者ニーズを踏まえた給水サービスの充実
- 環境:環境保全への貢献
- 国際:我が国の経験の海外移転による国際貢献
ちなみに,厚労省水道整備課のHPには,既に水道ビジョンの全文が掲載されています。水道関連情報を総括してあつかっているので非常に使いやすいです。
ちなみに,水道ビジョンの達成状況等については,水コン協から,水道ビジョン基礎データ集が公表され,及びフォローアップ調査等が実施されていますので,現状把握にはこれらの資料を参考されるとよいでしょう。
なお,平成15年1月に「水道ビジョン」の骨格が業界新聞各紙を通じて公表された当時の新聞記事からの引用は以下のようになっていました。完成版との比較もおもしろいかも...
<今後の水道施策の目指すべき方向>
- 需要者の多様的かつ高度化した二ーズヘの対応
- 需要者の満足度の高い水道
- 蛇口からの視点による水道への再構築
- 飲みたい水道を目指して
- よりきめ細やかな給水サービスヘと自ら高く目標を掲げて進む水道
- 需要者参加のもと次世代へとつながる水道
- 非常時でむ需要者の信頼に応えられる水道
- 環境問題、国際杜会に責献する水道
- 蛇口で水が飲める我が国の水道技術・文化の伝承
<長期的な政策目標>
- 需要者が安心して飲める水道水の供給
大事な飲料水を責任をむって給水できるよう、水道水源から給水栓に至るまで、一貫して水質管理を実施
- いつでもどこでも安定的に生活用水を確保
未普及地域を早期に解消するとともに、災害・テロ・事故による需要者への影響を最小化するための被害の未然防止策、事後対策の充実
- 地域特性にあった経営と技術基盤の強化
広域化の概念を広げ、我が国にふさわしい官民パートナーシップのもと、持続可能な水道システムを支える基盤を強化
- 水道技術の継承と発展
水道技術に携わる人材の確保と育成を行うとともに、水道を取り巻く情勢の変化に対応した技術革新と新技術の普及促進
- 需要者二-スを踏まえた顧客ザービスの充実
相互理解のための情報交換・情報共有を推進
- 環境保全への貢献
エネルギー消費産業としての責任をもってエネルギー対策にむ貫献するなど環境にやさしい水道の構築
- 我が国の経験の海外移転による国際貢献
国際的な動きに調和し水道分野の国際化を進めるとともに、我が国の成功例をむとに途上国の給水環境改善に責献
<目標達成のための総合的な水道政策の推進>
- 水道の経営・運営への多様な形態の提示と普及
- 新たな概念による広域化の推進による経営基盤の強化
- 技術水準の向上我が国の水道にふさわしい官民パートナーシップ(PPP)の構築
- コスト削減を行いつつ適切な費用負担による施設の整備・更新
- 隻中と分散を最適に組み合わせた水供給システムの構築
- 過疎地等効率性に課題を有する地域への水道整備・維持管理支援
- 安心・快適な給水確保
- 原水水質目標の設定による水道水源の保全への積極的な働きかけ
- 取排水系統の見直し高度浄水処理施設の着実な整備給水用具
- 給水装置工事レベルの向上貯水槽水道末端までの水質管理と快適性確保
- 地域の実情に即した検査体制の整備
- 水質検査データの適時的確な把握と需要者への情報提供
- 災害対策等の充実
- 地域特性を踏まえた必要な給水安全度の確保とリスク管理
- 大規模地震が想定される地域における耐震対策の確実な実施
- 広域連絡管によるバックアップ体制の整備
- 必要な応急給水,迅速な応急復旧のための体制確保
- 事故対策,テロ対策の強化
- 環境・エネルギー対策の強化
- 水道経営への経済性と環境保全のWin-Winアプローチの導入
- 水の持つ位置エネルギー,熱エネルギー等の有効利用
- 最適取水,浄水計画等トータルで見た環境負荷低減への貢献
- 国際協力を通じた水道分野の国際貢献
- ミレニアム宣言に資する途上国の水道分野の国際協力の推進
- 水道分野の国際貢献を水質するための人材プール・ハブ組織等の形成
- ISOなどの規格面での国際調和の推進等
新水道ビジョン
「新水道ビジョン」とは,厚労省が水道ビジョンを見直したもので,平成25年3月付けで正式に公布されました。
その目的は,「50年後、100年後の将来を見据え、水道の理想像を明示するとともに、取り組みの目指すべき方向性やその実現方策、関係者の役割分担を提示した」ものとのことです。(厚労省水道課HPより引用)
新水道ビジョンでは以下の3点を水道の理想像とし,この3つの観点から,50年後,100年後の水道の理想像を具体的に示し,これを関係者間で共有することとしています。
1.安全:全ての国民が,いつでもどこでも,水をおいしく飲める水道
2.強靭:自然災害等による被災を最小限にとどめ,被災した場合であっても,迅速に復旧できるしなやかな水道
3.持続:給水人口や給水量が減少した状況においても,健全かつ安定的な事業運営が可能な水道
これらの推進要素として水道関係者の「挑戦」と,単独での対応に限界がある場合は他の水道事業体や関係行政機関,民間事業者等の立場を超えた「連携」を挙げています。水道関係者が「挑戦」「連携」をもって取り組むべき方策として、3種類、15項目を挙げています。
1.関係者の内部方策
(1)水道施設のレベルアップ(強/(持))
(2)資産管理の活用(持)
(3)人材育成・組織力強化(強/(持))
(4)危機管理対策(強/安)
(5)環境対策(T)(持)
2.関係者間の連携方策
(1)住民連携(コミュニケーション)の促進(持/安/強)
(2)発展的広域化(持/強)
(3)官民連携の推進(持)
(4)技術開発、調査・研究の拡充(安/持)
(5)国際展開(持)
(6)環境対策(U)(持)
3.新たな発想で取り組むべき方策
(1)料金制度の最適化(持)
(2)小規模水道(簡易水道事業・飲料水供給施設)対策(安/(持))
(3)小規模自家用水道等対策(安/(持))
(4)多様な手法による水供給(持/(強))
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