水道技術経営情報
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水道事業立入検査 Inspection

 水道事業への立ち入り検査については,平成13年度に水道法改正に併せて一律に行われるようになりました。平成13年度には79事業体に検査を実施,15事業体に対して文書指導を行うことになりました。今後は毎年立ち入り検査を行っていき,概ね5年程度で一回りする方針とのことです。

 毎年の立入検査実施状況についてはこちら。

 厚生労働大臣認可事業者への指導監督に関する情報【厚生労働省 水道対策】

【参考】

立入検査の概況

1)立ち入り検査の制度と根拠

 水道事業の立ち入り検査については,水道法に規定があります。

第三九条(報告の徴収及び立入検査)

 厚生労働大臣は,水道(水道事業等の用に供するものに限る。以下この項において同じ。)の布設若しくは管理又は水道事業若しくは水道用水供給事業の適正を確保するために必要があると認めるときは,水道事業者若しくは水道用水供給事業者から工事の施行状況若しくは事業の実施状況について必要な報告を徴し,又は当該職員をして水道の工事現場,事務所若しくは水道施設のある場所に立ち入らせ,工事の施行状況,水道施設,水質,水圧,水量若しくは必要な帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項及び第四十条第八項において同じ。)を検査させることができる。

2−5 略

 生活衛生環境関連の検査強化は時代の趨勢,水道事業の形態を多様化するためにも重要な施策となるでしょう。

2)立ち入り検査の結果

 立ち入り検査は平成13年度に水道法改正に併せて一律に行われるようになりました。平成13年度には79事業体に検査を実施,15事業体に対して文書指導を行うことになりました。今後は毎年立ち入り検査を行っていき,概ね5年程度で一回りする方針とのことです。

 毎年,新聞発表や全国課長会議などの場で,その結果の概要がアナウンスされます。例えば,水050210によると,平成16年度の立ち入り検査の結果では,以下のような指摘が多かったとのこと。

  • 文書指導
     毎日水質検査の不適切,水道技術管理者に関する水質検査の責務規定違反
  • 口頭指導
     水道技術管理者の責務に関する関与,衛生管理に関した健康診断の検査項目などの不適切,認可関係等の手続きの不備,水質検査採水地点の不適切,クリプトスポリジウム対策が不十分

 概して,水質管理体制,技術管理者の制度・技術上の自覚,需要者への情報提供などに課題があるとのことでした。

【参考】


立入検査の検査内容

 水道産業新聞に立入検査でのチェック項目が掲載されていましたので,以下にこれを引用します。検査を受ける事業体の方は以下について確認されることをおすすめいたします。

1)事業概要について

  • 事業規模
  • 実績年間取水量
  • 実質年間浄水量
  • 最新の普及率,有収率,有効率,負荷率等

2)申請,届出等について

  • 認可申請書の手続きは適正か
  • 各種の届出は適正か
    • 給水開始前届出(法第13条)
    • 料金変更届(法第14条第5項)
    • 認可申請書記載事項の変更届出(市長交代等)(法第7条第3項,法27条第3項)
    • 第三者委託届(法24条の3第2項)
  • 施設内容と整合がとれているか(後述

3)水道技術管理者の業務について

  • 技術管理者の役職名
  • 技術管理者の水道の実務経験年数
  • 技術管理者の,技術管理者としての経験年数
  • 技術管理者は適切に指名されているか。
  • 技術管理者は資格要件を満たしているか。
  • 技術管理者の以下業務を把握し,かつこれらの業務に従事し,および従事する職員を適切に監督しているか
    • 施設基準への適合
    • 給水開始前の水質検査
    • 給水開始前の施設検査
    • 給水装置の構造及び材質が基準に適合しているかどうかの検査
    • 定期及び臨時の水質検査
    • 定期の健康診断
    • 衛生上の措置
    • 給水の緊急停止とその権限

4)危機管理について

(1)災害対応体制全般

  • 緊急時の連絡体制の整備は適切か。
    • 内部連絡体制
    • 外部連絡体制
    • 外部連絡体制の対象機関
  • 危機管理マニュアルは整備されているか。
    • 震災対策マニュアル
    • 施設事故対策マニュアル
    • 水質事故対策マニュアル
    • テロ対策マニュアル
    • 停電時対策マニュアル
    • 渇水対策マニュアル
  • 緊急時の対策は適切か。
    • 近隣の水道事業者との協定
    • 隣接する水道事業者との連絡管の整備
    • 水道用資機材の備蓄
    • 応急給水のための給水車の所有
    • 給水拠点の整備
  • 防災訓練の実施状況はどうか。
    • 回数
    • 訓練の内容
    • 参加者

(2)個別災害対応

  • 渇水時における対応策等について通知(昭和49年7月19日環計第36号通知「渇水対策について」)等に基づく適切な実施がなされているか。
  • 水質事故時における当該事業内での連絡・対応体制の整備,地域住民,関係水道事業者及び関係行政機関への連絡・対応体制は整えられているか。
  • 地震対策として,水道施設の耐震化等が計画的に進められているか。また,地震等災害時における,当該事業者内での連絡・対応体制の整備,地域住民,関係水道事業者及び関係行政機関への連絡・対応体制は整えられているか。
  • 停電時における対策について,当該事業者内での連絡・対応体制の整備,地域住民,関係水道事業者及び関係行政機関への連絡・対応体制は整えられているか。また,停電時に配慮した水道施設の整備等はなされているか。

(3)給水の停止(法15条関係)

  • 給水停止の実績はあるか。有る場合,停止の根拠は適切であるか。
  • 法15条2項に基づく給水停止を実施した場合,給水停止の区域および期間をあらかじめ関係者に通知をしたか。
  • 給水停止の執行権限者の資格は適切か。(係長級の職員の場合が多いが上位の役職者の権限とすべきではないかとの指摘)

5)水質管理

(1)水源地周辺の汚染源

  • 水源地に付近において人畜の屎尿を用いた耕作などが行われていないか。
  • 汚染源となる工場や事業所などを把握しているか。
  • 汚染源に直ちに連絡が取れるか。

(2)水源地および原水の監視

  • 定期的パトロールは行われているか。
  • 監視カメラやセンサーなどを設置しているか。
  • 周辺関係者に対する監視協力の依頼はなされているか。
  • 原水の監視はおこなわれているか。
    • 原水水質の連続測定
    • 魚類等の生物利用による警報システム
    • 定期的な採水による水質検査

(3)浄水の水質検査(46項目の水質検査体制)

  • 全項目自主検査,一部外部委託,全部を委託の別
  • 水質検査の委託先機関名
  • 水質試験検査結果の取り扱い
  • 水質検査の実施と記録状況(法4条,法20条関係)
    • 水質基準の遵守状況を満たしているか。特に,残留塩素,消毒副生成物を確認しているか。
    • 過去5年間の水質検査に関する記録は保存されているか。
    • 水質検査を委託している場合,委託先機関が適切であるか。
    • 水質検査の回数は法定回数であるか。
    • 特に,検査項目の省略を行っている場合,その検査頻度は適切か。水質検査の実施場所は適切か。
    • 特に毎日検査項目について,土日祝日にも行われているか。
    • 臨時の水質検査が必要となるような状況は生じていないか。生じている場合に適切に検査を行っているか。
    • 水質検査における精度管理は適切に行われているか。
  • 給水開始前検査(法13条関係)
    • 過去5年間の水質検査に関する記録は保存されているか。
    • 検査項目は適切に実施されているか。
    • 検査の結果は基準を満たすものであったか。満たしていない場合は適切な措置がなされているか。
    • 必要に応じ,水源,配水池,浄水池等についても検査がなされているか。
    • 給水前検査の実施に関し,検査内容等が明記されている検査に関する規則が整備されているか。
  • 健康診断(法21条関係)
    • 過去1年間における記録は保存されているか。
    • 健康診断の回数は法定の回数(概ね6ヶ月ごと)に行われているか。
    • 臨時の健康診断が必要な状況は発生していないか。発生している場合,健康診断を行っているか。

(4)衛生上の措置全般(法22条関係)

  • 水道施設の衛生管理
    • 取水場,貯水池,導水渠,浄水場,配水池,ポンプその他の施設は常に清潔であり,水が汚染されないよう配慮されているか。
    • これらの施設にみだりに人畜が立ち入れないよう適切な措置を講じているか。
  • 給水栓における塩素濃度の確保
    • 給水栓における水が遊離残留塩素0.1mg/L(結合残留塩素の場合は0.4mg/L)以上を保持するように適切に塩素消毒が行われているか。
    • 塩素注入は塩素が十分に混合できるような場所を選んでいるか。(配水ブロックごとの最下点に設定する必要)
    • 水源付近および供給する水が病原性微生物に著しく汚染される怖れ有る場合,病原性生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含む怖れがある場合には,給水栓における水の遊離残留塩素濃度は0.2mg/L(結合残留塩素の場合は1.5mg/L)以上を保持するように適切に塩素消毒が行われているか。

6)施設の管理について

(1)施設基準の遵守(法第5条関係)

  • 事業認可内容と実際の施設が整合しているか。整合していない場合,その理由ははっきりしているか。
  • 事業認可に示された各施設の整備進捗状況はどうか。
  • 水道の各施設が,原水の質および量,地理的条件,当該水道形態に応じ,適切な要件を備えた施設が配置され,かつ,給水の確実性が考慮されているか。
  • 水道施設の構造および材質は,自重,積載荷重,水圧,土圧,風圧,地震力,積雪荷重,氷圧および温度応力等の荷重や外力に対して,構造上安全で,かつ耐久性を有するか。また,漏水がなく,外部からの汚染や資材からの汚染のおそれのない構造,材質のものとなっているか。
  • 水道施設の技術的基準を定める省令を満たしているか。

(2)施設の管理把握

  • 定期的な水道施設の検査がなされているか。異常な状態が発見されていないか。
  • 異常状態が発見された場合,ただちに詳細な検査を行い,補修・改善などを含む適切な措置がなされているか。
  • 浄水場から排出される汚水および汚泥の処分等は関係法規に基づき適切になされているか。

(3)管路の状況とその把握

  • 技術者による布設工事の監督について(法12条)
    • 布設工事監督者は適切に指名されているか。
    • 布設工事監督者は資格要件を満たしているか。
    • 工事監督者が適性に実施しうるよう,監督者およびその補助者の組織が整備されているか。また,監督の業務が定められ,責任の所在が明確化されているか。
  • 導水管・送水管・配水管の埋設マッピングシステム等により確認できているか
  • 漏水防止対策についての年次計画が策定されているか。
  • 老朽管の更新について積極的に実施されているか。特に,石綿セメント管について,計画的な更新に努めているか。

(4)給水管等における鉛管対策

  • 鉛管残存状況の把握実態の現状
  • 具体的な鉛管対策(布設替計画の策定・布設替促進のための広報活動・朝一番の滞流水の飲用外使用の広報)
  • pH調整

7)住民参加に向けた取り組み

  • 需要者に対して積極的に情報を提供しているか。
  • 情報提供の内容は以下の項目を含むか。
    • 水質検査計画など水道水の安全に関する事項
    • 水道事業の実施体制
    • 水道事業に関する費用に関する事項
    • 水道料金など需要者の負担に関する事項
    • 給水装置及び貯水槽水道の管理等に関する事項
    • 臨時の水質検査の結果
    • 非當時における危機管理に関する事項
  • 情報提供の手段にはいかなる方法を用いているか。
    • インターネット
    • 広報誌
    • 広報報車
    • 物品の配布
    • パンフレットの配布
    • 検針票,請求書,領収書
  • 水道施設の一般公開の方法は。
  • 住民意見の反映方法(制度,評議会に参加等)は。

8)事業経営について

  • 料金設定,経営収支についての検討を行っているか。
  • 水道料金の値上げについての考えかたはあるか。
  • 必要かつ適切な投資を行っているか。

9)その他

【備考】


参照


目次

立入検査の概況
 水道事業体に対する立ち入り検査の実施状況等。

立入検査での検査内容
 水道事業体に対する立ち入り検査について。


備考・出典

 「水道管理のレベルアップに向けて」水道産業新聞2002/10/10に特集記事,水道法ハンドブック,指導事例などを組み合わせて作成しました。

更新履歴

  • 201216 リンク先修正
  • 191205 立入検査実施状況についてのリンクを追加
  • 120530 新様式で作成


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